∧∧∧山にまつわる怖い話Part9∧∧∧
『毛虫』
45 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/05/15 00:55 ID:gsYipgG2
友人の話。
春の峠道をのんびりと車で流していた時のこと。
ちょうど桜の花も終わる頃で、道路を渡る毛虫の姿がよく見られたという。
見通しの悪いカーブを曲がった瞬間、いきなり路面の色が真っ黒に変わった。
狭い峠道は一面、びっしりと毛虫で覆われていた。
必死でブレーキを踏んだが間に合わず、毛虫の大群に乗り上げてしまう。
途端タイヤがスリップし、毛虫を轢き潰しながら車は横滑りを始めた。
谷に落ちるよりはと、強引にガードレールに接触して停止させたそうだ。
安堵の息を漏らしながら、後ろをふり返った彼は目を疑った。
道路上には何も見えず、彼の車のタイヤ後しか残っていなかった。
何かに騙されたような気がした、と彼は言っている。
『奇妙な登山者』
46 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/05/15 00:56 ID:gsYipgG2
知り合いの話。
ロッククライミングをするために岩場へ向かう途中のこと。
狭い登山道の向こうから、誰かが歩いてきたという。
片足を引き引き、頭も左右にふらふらと、奇妙な歩き方をしていた。
さては怪我でもしたのかと、彼は小走りに駆けよった。
登山者は近くで見ると、それはひどい有様だったらしい。
折れた手足からは骨が突き出し、シャツはどす黒く染まっていた。
頭の鉢は欠けて脳漿らしきものがこぼれている。
歩いてはいたが、明らかに滑落死体だった。
しかし、それ以上に彼を恐怖させたのは、その登山者の顔だった。
虚ろな目を見開いたその顔は、間違いなく彼自身のものだったのだ。
硬直した彼の横を通り過ぎ、彼の亡骸は麓の方へ下っていった。
彼はその日、予定していた岩登りを取り止めたという。
『桜酔い』
47 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/05/15 00:57 ID:gsYipgG2
先輩の話。
彼の実家の裏山には小さな公園があり、見事な桜の木があるそうだ。
大学生の頃、夜桜を楽しもうと、先輩は深夜に一人出かけたという。
街灯は薄暗かったが、桜は満開で十分堪能できた。
公園のブランコに揺られながら、カップ酒をちびちび舐める。
いつの間にか、公園の真中に小さい女の子が姿を見せていた。
嬉しくてたまらない様子で、軽やかに跳ね踊っていたらしい。
先輩はぼんやりと、しかし魅入られたようにそれを眺めていたそうだ。
なぜか、その後の記憶がはっきりしないのだと彼は言う。
気がつくと、家に帰って床についていた。
それから三日間、彼は原因不明の熱にうかされた。
事情を知ったお祖父さんから「桜にあてられたな」と言われた。
見てよい物とよくない物の区別くらいは付けろ、そう注意されたそうだ。
48 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/05/15 01:08 ID:gsYipgG2
>>47
その地方では『桜酔い』などと呼ぶのだそうです。
お祖父さん曰く、娘の姿だったから先輩は助かったのだとか。
娘でなくそれが鬼の姿をしていたら、魂を取られてしまうとか。
うーむ、時に桜は幻想的なほど美しいことがありますが、
そういった美には別の側面もあるということでしょうか。
次の記事:
『コワモテ様』
前の記事:
『ネット恋愛をしている人』