幽霊マンションシリーズ。
『エレベーターホールで正体不明の悲鳴』の続き
∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part32∧∧
978 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2007/04/02(月) 00:19:48 ID:Q2lZUqY40
「あぁ、有名だよ。そのマンション」
しれっとした顔でその女性は言った。
彼女は不動産関係に従事している者で、私と友人との共通の知り合いでもある。
「まったく、決める前に一言相談してくれれば、止められたのにさ。
あそこってこの業界じゃ、それなりに名が売れちゃってる物件だからね。
私だったらすぐ気がついたのに」
そう口を尖らせて言う。
そんなに悪名高いの、あそこ?
越した直後に俺も遊びに行ったけど、その時は全然わからなかったな。
「集団引っ越しがあったのは八階でしょ?
多分、その一つは“時刻表の部屋”で間違いないと思うよ」
何だいその“時刻表の部屋”って?
「部屋の柱の一つにね、時刻が刻んであるの。写真で見たことある。
“-23-50-”って読める数字が彫り込んである。
何度か内装業者が上から隠してるんだけど、住人が部屋出る時にはなぜかまた浮き出てるみたい。
住んでた人が毟ったのかどうかは不明だけど」
979 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2007/04/02(月) 00:21:04 ID:Q2lZUqY40
数字が時刻とは限らないんじゃないかな。
「聞いた話じゃね、毎晩じゃないらしいけど、深夜の十一時五十分になると、
コンコン叩かれるんだってさ。窓ガラスが」
・・・八階だよな。誰が叩いてるんだよ。
「知らないわよ。しつこく叩かれるからさ、カーテン開けて外を確認する訳。
そしたらさ、目の前のベランダには誰もいないんだって」
・・・まぁ良かったかもな、変なモノが見えなくて。
「見えるのよ。そこのベランダじゃなくて、斜め前の部屋のベランダに。
黒っぽい人影が、そこからピューって身を投げるのが」
そこのベランダって、もしかして。
「そそ、あの子の住む部屋の真上。
大体あの部屋、十年足らずの内に都合三人が身投げしちゃってるから。
またしばらく塩漬けになるでしょうね。
担当者は頭痛いと思うわ」
知り合いの住処だけに、聞いてるこちらも頭が痛くなりそうだ。
「今回引っ越しした部屋って、その身投げ部屋が見える位置にある所ばかりなのよ。
ひょっとしたら、他の部屋も窓コンコンされてたかもね」
仏頂面のまま、知り合いはそう教えてくれた。
980 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2007/04/02(月) 00:23:26 ID:Q2lZUqY40
そんな怖い部屋って、あるモンなんだな。
私が溜め息吐きながらそう言うと、知り合いは首を振ってこう返した。
「“時刻表の部屋”は、怖いけど害があるって訳じゃないわ。
もっと怖ろしい部屋がある」
・・・何なのさ、その部屋って。
「入居した人がね、半年も経たないで自殺しちゃうって部屋があるらしいの。
なんか洒落にならない数が逝っちゃってるって噂なのよ。
あんまりヤバイんで、今は物置って形で使えなくしちゃってるみたい」
おいおい。それだけヤバかったら、瑕疵物件とやらで話題になるんじゃないか。
俺もそこそこ長いけど、流石にそんなレベルのもの、聞いたことないぞ。
「自殺するっていってもね、皆が皆、遠く離れた余所の場所で死んでるの。
部屋の外で死ぬと、不動産の瑕疵条件には当たらないのよ」
・・・それもそうか。でも本当かよ、それ。
「過去に何度か御祓いとかもしてるみたいなんだけど、効果無いって。
霊能者にも見て貰ったけど、何も見えない、わからないって言うらしいわ。
ただ、何か非常に濃いモノを感じるって」
何が濃いっていうのか、我々凡人にはまず掴み所のない話だな。
「まったくね。だからその部屋は“濃厚な部屋”ってこっそり呼ばれてる。
とは言え、実際、部屋に原因があるかどうかなんてわからないけど」
「でも、この部屋に入って自殺した人って皆、ある共通点があるの。
必ず自分の部屋から持ち出した物で、首吊ってるんだって」
まぁ偶然かも知れないけどね、と彼女は最後に付け加えた。
982 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2007/04/02(月) 00:25:14 ID:Q2lZUqY40
彼女は続けて言う。
「コレに限らず、あそこって変わった部屋がまだあるのよ」
聞くと“鎧の部屋”というのもあるらしい。
「夜寝ているとね、枕元に鎧武者が立ってウォー!ウォー!って叫ぶんだって。
刀振り回しながら。それだけみたいなんだけど、住人が居着かない。
今は人を入居させずに、マンションの集会所みたいな使われ方してるって」
別の棟には“弓の部屋”もあるのだとか。
「やっぱり夜寝ていると、ビーーーン!って弓弦が鳴るような音がするの。
続いて、カッ!と矢が刺さるような音が聞こえる。
これが夜毎に段々自分に近づいてくるのがわかるんだって。
ここも人が居着かなくて、やっぱりと言うか集会所になってる」
話を聞いて、自分が実はトンでもない場所に、それと気がつかず出入りしていた気分になった。まったく頭が痛い。
984 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2007/04/02(月) 00:26:09 ID:Q2lZUqY40
余談。
「・・・そんな話聞いてくるってコトは、あの子のことが心配なんだ」
どことなく拗ねた様子で彼女が言う。
実はこの彼女、完全に同性専門の性愛趣味を持っていて、両刀使いの友人とはそれなりの仲だということを私は知っている。
上の言葉も、私と友人の関係に焼き餅を焼いていることは間違いないのだが、
焼き餅の対象は女性の友人ではなく、男性の私に向けられていたのだ。
・・・重ね重ね、まったく色んな意味で頭が痛かった。
『カリカリという音で目が覚めた』に続く
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