∧∧∧山にまつわる怖い話Part8∧∧∧
『緑の霧』
88 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/03/27 22:17
友人の話。
春山に一人で分け入っていた時のこと。
早朝まだ暗いうちにテントをたたみ、意気揚々と歩き出したという。
下りの斜面で濃霧がかかり、乳白色の帳に包まれた。
足元を確認しながら歩いていた彼は、ふとあたりの様子に違和感を覚えた。
加えて何か甘い匂いがした。どこかで嗅いだような匂い。
顔を上げてみると、いつの間にか視界が緑色に染まっている。
彼の周囲には、淡い緑色の霧が渦巻いていた。
ギョッとしたという。緑の霧など聞いたこともない。
慌てて足を速めると、五分ほどで霧を抜けた。
振り向くと、緑色のガスが斜面に沿ってゆっくりと上っていくところだった。
昼時、食料を出して彼は思わず顔をしかめた。
ザックの中の食料がすべて、青緑色のカビで侵されていたのだ。
朝には何ともなかったはずの食料が、とても食べられるような状態ではなかった。
甘ったるい腐敗臭が、ザックの中から立ち上っていた。
その時初めて、霧の中で嗅いだ匂いに思い至ったという。
今のところ彼の身体は、どこも具合が悪くなっていないそうだ。
『小さなお堂』
89 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/03/27 22:18
友人の話。
仲間二人で山歩きをしている時に、いきなりの豪雨に見まわれた。
日が落ちても野営に適した場所が見つけられず、へとへとになっていた。
やがて道の脇に小さなお堂を見つけ、軒の下にもぐり込んだという。
雨合羽を脱ぐと、軒下でそのまま眠ってしまったそうだ。
翌朝、目を覚ますと雨は既に上がっていた。
一つ伸びをしてあたりを見回すと、昨夜は気がつかなかったものに気がついた。
お堂の扉一面に、白地に赤で書かれた古いお札がびっしりと貼られていた。
扉に近づくと、中から何か音が聞こえた。
コツコツという音がこちらに近づいてくる。
扉がぐっと開きかけた。
お札を破ることができないのか、扉は開かず、お堂の中もまた静かになった。
彼は眠り込んでいる仲間をたたき起こして、そこを発ったそうだ。
『穴場のポイント』
90 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/03/27 22:19
友人の話。
渓流釣りの仲間に、穴場のポイントを教えてもらったのだという。
そこはそれほど深くない山中の沢で、実に釣り心を刺激する場所だったそうだ。
近くに車を止められる広場もあり、足の便も申し分なかった。
形の良い鮎を何匹か釣り上げた後、ふと誰かの視線を感じた。
土手の上を見上げると、そこに灰色の人影が三人、じっと佇んでいた。
逆光でもないのに、表情などは伺えない。
理由は分からなかったが、非常に嫌な感じがしたそうだ。
その時友人が怒ったように口にした。
「まじまじと見る奴がいるか。無視しろったら!」
慌てて目を逸らすと、土手の向こうに煙を上げる高い煙突が見えた。
急に理解が訪れた。
そのポイントは火葬場のすぐ下にあったのだ。
目を戻すと人影はすでに消えていた。
「穴場になるわけだ」
そう呟いたのだという。
彼は以来そこには行っていないが、友人は相変わらず足を運んでいるそうだ。
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