∧∧∧山にまつわる怖い話Part7∧∧∧
『綺麗な淵』
324 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/02/29 00:32
友人の話。
学生時代、キャンプした場所の近くに、小さな滝と綺麗な淵があった。
淵の水でビールを冷やしておき、夜中に引き上げに行ったのだそうだ。
真っ暗な水の中で、光る物が群れをなして泳いでいた。
珍しいな、光る魚なんて本当にいるんだ。
彼がそう思って顔を近づけると、光っているのは魚ではなかった。
光っていたのは、ピンポン球くらいの大きさの、たくさんの眼球だった。
彼は黙って酒を引き上げると皆の所へ戻った。
大いに飲んで、そのことを忘れようと考えたのだという。
とんでもないピッチで酒を飲み潰れてしまったその夜の彼は、しばらく仲間うちで笑い話のネタになったそうだ。
『グチ』
325 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/02/29 00:33
知り合いの話。
彼の親戚に筆作りの名人がいた。
彼が書道をたしなむせいもあって、よくその伯父さんの家に遊びに行っていたそうだ。
ある時、一本の変わった筆を見せられたことがあるという。
見た目は普通の白毛筆なのだが、何というか、手触りがえらく気持ち悪かったらしい。
毛の一本一本が、まるで自ら指にまとわりついてくるような気がしたのだという。
これはグチの毛から作った筆だ、と伯父さんは言った。
グチというのは伯父さんが勝手に付けた名前で、本当の名前は猟師しか知らないそうだ。
一種の禁忌に当たる獣らしく、その毛皮は滅多に手に入らない。
伯父さんの数代前の先祖が、かなり無理をして入手したということだ。
その筆には、人を呪う力があると伝えられていた。
呪いたい人の名前をその筆で書くと、ひどい災いがその人に降りかかるのだと。
試す気にもならないけどな。
そう伯父さんは苦笑していた。
伯父さんは、つい先日に亡くなったそうだ。
呪い筆がどこに行ったのかは、もう彼にはわからないのだという。
『西瓜畑』
326 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/02/29 00:35
私の体験した話。
私の友人に、瀬戸内の小さな島の出身の者がいる。
彼の実家は島の山裾で、西瓜などの野菜を作っていた。
学生の頃に遊びに行ったことがあるのだが、その西瓜畑の中で場違いな物を見つけた。
蛸壺が、畝の間にいくつか転がされていたのだ。
壺の口はまるで罠のような仕組みに改造されていた。
これは何だと尋ねると「蛸が西瓜を食べに来るんだ」と答えられた。
蛸が山を登るのか? 思わず聞き返すと、
「実際に畑を荒らしに来るんだから仕方がない」彼は肩をすくめた。
果たして彼にからかわれたのかどうか、私にはわからなかった。
畑の中の蛸壺の姿は、今でも私の記憶に残っている。
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