∧∧∧山にまつわる怖い話Part7∧∧∧
『ヒトクチ』
48 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/02/21 01:11
知り合いの話。
彼のお爺さんが猟師をしていた頃、山にヒトクチと呼ばれる化け物が出たという。
獰猛な肉食獣で、獲物を一口に呑み込んでしまうことから、この呼び名がついたそうだ。
凶暴な性質の上に知恵もまわり、罠には絶対に掛からなかった。
村人から犠牲者が出るに至り、ついにヒトクチを退治することになった。
大規模な山狩りをおこない、とうとうヒトクチは仕留められた。
死体を改めてみると、異形の姿をした山犬のような獣だったらしい。
黒い体毛は短くて、身体の大きさは牡鹿ほどもあり、異様に頭部が大きい。
恐るべきことに、体長の半分近くを顎が占めていたという。
村には死体を入れずその場で焼いて埋め、塩を撒いたのだそうだ。
人間は深い山の中まで、理由もなく踏み入っちゃいけない。
一体全体、どんな怖いものが出てくるか分からないから。
お爺さんは彼にこう言っていたそうだ。
『山越えルート』
49 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/02/21 01:12
同僚の話。
その日は仕事が長引き、帰るのが深夜になったという。
顔馴染みのタクシー運転手を呼び、送ってもらうことにした。
道中、その運転手がおかしなことを言う。
「山越えのルートを避けていいですか?」
かなりの遠回りになる。一言の元に拒否すると、
「料金はいつも通りでいいです。いや負けてもいい。お願いします」
さすがに気になって理由を問うてみると、山越えルートの途中に峠道があるのだが、
深夜を過ぎるとそこは通りたくないのだと言う。
「お客さんがいようがいまいが、あれはお構いなしなんですよ」
それだけ言うと、運転手は口を閉ざした。
それ以上はどうしても教えてもらえなかったという。
結局、いつもより安い金額で、遠回りして帰宅したのだそうだ。
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