∧∧∧山にまつわる怖い話Part5∧∧∧
『聞き慣れない音』
226 :聞いた話:03/12/24 00:08
会社員に聞いた話。
ダムサイトで弁当を食べた後、柵にもたれてダム湖を眺めていた。
強い陽射しの中、断崖の下の湖面には真っ黒な影が広がっている。
と、聞き慣れない音が聞こえてきた。紙を擦り合わせるような乾いた音。
聞こえると言うより、耳鳴りのように頭の芯に響いて意識を揺さぶる…
「**さん!」
突然、同僚に後ろから呼び掛けられて我に返った。
上半身が覗き込むように断崖の方に乗り出していて、両足が宙に浮いている。
いつのまにか柵を乗り越えようとしていたらしい。
そこで初めて気が付いた。
真昼のこんな時間に、影があんなにも広がるはずが無い…
慌てて柵を離れようとした時、湖面の影が無数の人型に分かれてサ─ッと散った。
『枝葉の間』
227 :聞いた話:03/12/24 00:09
杣人に聞いた話。
木陰に座って一服しつつ何気なく頭上を仰ぎ見ると、枝葉の間に顔が見えた。
つるりとした赤ん坊のような顔。小さな瞳はこちらを無表情に見つめている。
何故か『捨て子だ』と直感した杣人は、思わず「可哀想になぁ」と呟いた。
すると顔がクシャクシャと歪み、目から溢れた水滴が雨粒のように落ちてきた。
「退け!」
突然、そいつが太い声で叫んだので、杣人は思わず腰を上げ木陰から離れた。
直後、一抱えほどもある大きな石が、彼の座っていた辺りにドスンッと落ちてきた。
『それはなんだ?』
228 :聞いた話:03/12/24 00:10
杣人に聞いた話。
ラジオを流しながら枝打ちをしていると、薮の中から一人の男がのそりと這い出てきた。
「それはなんだ?」
ラジオを指さしてそんな事を聞く。
「ラジオに決まっているだろう」と答えると、
「そうか…それがラジオというものか…」
などと独りごちて薮の中へ消えた。
男の背格好は普通だったが、見たこともないような襤褸を身に纏っていたそうだ。
『物凄い女の悲鳴』
229 :聞いた話:03/12/24 00:11
村役場の職員から聞いた話。
台風の最中、村内の見回りをしていると、数軒の家から住民が出てくるのが見えた。
こんな悪天候に何故?と理由を聞くと、
「裏山から物凄い女の悲鳴が聞こえるので、堪らなくなって逃げて来た」と言う。
職員は耳を澄ませたが、強風の唸りが聞こえるばかり。
兎に角、近くの小学校に避難するように住民達を誘導していた矢先、
一際強い風が吹いたかと思うと、目前の裏山の木々がドミノ倒しのように一斉に倒れた。
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