∧∧∧山にまつわる怖い話Part5∧∧∧
『白い百合の花』
153 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :03/12/20 22:15
知り合いの話。
仲間三人で夏山を縦走していた時のこと。
開けた場所を選んでテントを張った。
その野営地には、たくさんの白い百合の花が咲いていた。
真夜中、仲間一人が急に起き出したために、他の二人は目を覚まされた。
眠りを邪魔した仲間は、テントの床を這いずり回っていた。
何度呼びかけても返事がなく、やがて芋虫のように這い出ていったという。
開け放たれた入口から、百合の花が一輪ゆっくりと揺れているのが見えた。
二人が続いて外に出て見ると、月光の下で揺れていたのは百合ではなかった。
白く細い手が大地から突き出て、おいでおいでをして招いていた。
這いつくばった仲間を無理矢理テントに連れ戻し、まんじりともせず夜を越した。
翌朝、白い手は跡形もなく消えていた。
誘われた仲間は、昨夜のことをまるで覚えていなかったそうだ。
『急に荷物が重くなった』
154 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :03/12/20 22:18
知り合いの話。
峠道を歩いていると、急に荷物が重くなったのだという。
ザックにはおかしいところは見当たらず、溜まった疲労が出たのかと不安になった。
休もうかなと考えながら歩いていると、道のすぐ横に沼が現れた。
何気なく水面を見、思わず目を疑った。
ほんの一瞬だが、荷物に何かがしがみついているのが映っていたのだ。
小柄で灰色な猿のような姿をしていたという。
次の瞬間、いきなり荷物が軽くなった。
振り向いても何も見えなかったが、小走りに遠ざかる足音だけは聞こえたそうだ。
以来、彼は山に入る時は御守りを持参するようにしている。
『何かの果実』
155 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :03/12/20 22:21
友人の話。
一人で山歩きをしていた時のこと。
休憩しようと荷物を降ろすと、背側に何かがくっついているのに気がついた。
まだあまり熟れていない、何かの果実のようだった。
薄気味の悪いことに、実の表皮にはまるで人の顔のような凹凸が浮き出ていた。
その口に見える部分で、ザックの紐に噛み付いていたらしい。
どこで取り付かれたのかは、まったく分からなかった。
物好きな彼は、人面に触る気がしなかったこともあって、その果実をつけたまま山歩きを続けたそうだ。
二つ尾根を越えた所で、ボトリという落下音が聞こえた。
振り返ると、人面果が転がりながら、下生えの中に消えていくところだった。
ああやって生息圏を拡げている植物なのかな。
そう思ったのだそうだ。
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