∧∧∧山にまつわる怖い話Part4∧∧∧
『獲物』
736 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :03/12/11 01:11
知り合いの話。
彼のお爺さんが猟師をしていた時のことだ。
冬期で食料が乏しくなっていた頃、折りよく鹿を見つけ撃ったのだという。
鹿はよろめきながらも藪の中へ逃げ込んだ。
後を追って藪に踏み込んだ彼が見たものは、雪の上に置かれた鹿の首だった。
胴体の方はどこにも見当たらず、血の匂いがあたりに充満していた。
いつもはすぐ後をついてくる猟犬が、藪の外で恐ろしげに鼻を鳴らしている。
これは不可侵の領域で狩りをしちまったな、と悟って退散したそうだ。
「山の神さまには獲物を何回か取られたけれど、あれが一番怖かったな。
まぁ山で獲れる物は、本来が山の神さまの物だから仕方がないか」
お爺さんはそう言って屈託無く笑っていた。
『ヘッドライト』
737 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :03/12/11 01:12
知り合いの話。
町の外れの山中に、今はもう使われていない旧道が残っている。
夜中によくそこを通る知り合いが教えてくれた。
夜になると旧道途中の峠で、離れて後ろからついてくる車がいるのだという。
ヘッドライトは見えるのだが、車の車体が見える距離まで近づいてこない。
峠の出口で待っていても、いつまで経っても下りてこない。
夜釣り仲間ではわりと知られた話だが、本当に不思議だ。
それを聞いていたもう一人の知り合いが口を開いた。
彼のお爺さんが、昔その峠道で何かに追いかけられたことがあると。
お爺さんが言うには、青く燃える二つの人魂だったらしい。
彼は夜中にそこを通るのをやめることにしたそうだ。
『猿を飼っていた』
738 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :03/12/11 01:17
知り合いの話。
彼の祖父はかなりの偏屈で、人里離れた山中に独りで住んでいた。
人間嫌いで、彼の母が時々様子を伺いに訪れる以外には、人付き合いも無かった。
いつの頃からか猿を飼っていたらしい。
その祖父が死んだと連絡が入り、彼は久しぶりに実家に帰った。
葬式が終わり、祖父の家の片付けをしていた時のことだ。
彼が祖父の遺影を持って歩いていると、背後から嫌な笑い声がした。
振り返ってみると、猿が狭い檻の中からその遺影を見ていた。
猿は心底嬉しそうに、顔をいやらしく歪めて笑っていた。
その様はまるで人間のようだった。
爺ちゃん、一体どんな飼い方をしていたんだよ?
思わず呟いてしまったのだという。
気持ちが悪くもあり扱いにも困るので、猿は次の日に山に放したそうだ。
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