幽霊マンションシリーズ。
『エンコ』の続き
∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part36∧∧
319 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2008/01/13(日) 22:13:25 ID:QXhTqPOj0
友人の話。
このマンションでのオカルト騒動が始まってから、しばらく経った夜のこと。
帰宅してきた彼女は、ホールの掲示板に貼り紙がされてあるのに気が付いた。
『屋上への非常ドアが開いていたら すぐ管理人に連絡して下さい
絶対に屋上へは上らないようにして下さい』
確か屋上へのドアって、常に施錠されている筈だったけど。
そう思いながら部屋へ帰り、夕食の支度に掛かる。
やがて帰ってきた姉に、貼り紙の話題を振ってみた。
「うーん、まず閉まってるモンなんだけどね。
聞いた話じゃ、最近、時折開いてるのが最上階の住民に見られてるらしいの。
開いてるの見掛けたら、あんた上ってみる?」
まさかー。怖くて近よれないよ。
「でしょ。でもね見た人の話じゃ、一瞬フラフラッと上りたくなるんだって。
で二、三歩近よってから、我に返って逃げ出したんだってさ」
屋上から飛び下りた人って、いないよねー?
「うん、まだいないねー」
姉の微妙な返答に、言葉を詰まらせた友人だった。
320 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2008/01/13(日) 22:13:56 ID:QXhTqPOj0
妹「この前ねぇ、変な悪戯があったよー。
夜中に玄関の呼び鈴が鳴ったの。
はーいって出てみたけど、誰もいないのね。
でも、おかしいの。玄関のすぐ傍にいたから、間髪入れずに対応した筈なのに。
うちの位置から言っても、逃げる暇なんかないと思うんだけどな。
夏だっていうのに、ドア開けると肌寒い空気が流れ込んでくるしぃ。
そんな風に、最近、疲れること多いんだー」
姉「ベランダで洗濯物取り込んでいると、時々下の駐車場に影が見えたのね。
大体夕暮れ時が多かったからはっきりとは見えなかったけど。
それがさ、この前見上げてきたから、ふっと目と目が合ったのよ。
いや下の方だから、目なんて確認できなかったけど、アレは合ったね。
間違いない。一瞬だけどはっきり実感したもん。
でも、それから影を見なくなっちゃった。
私がじろじろ見てたから、バツが悪くなって引き籠もっちゃったかな?
あそこで散歩とかしてる人だったら、悪いことしちゃったかしら」
このような会話を、姉妹別々の場所で私は聞かされた。
以前、ホタル族の住民から聞いた話を思い出す。
・・・あー、開けちゃったんだ、ドア・・・
その話、姉妹に聞かせるべきか聞かせないべきか、たっぷり三日悩んだ私だった。
321 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2008/01/13(日) 22:15:27 ID:QXhTqPOj0
真夜中、息苦しさを覚えて目が覚めた。
何かが自分の上に覆い被さってきたかのような、そんな圧迫感。
ここ最近、こんな嫌な感覚を頻繁に覚えるようになっていた。
疲れてるのかなー、と思いながら首や肩を回していると、耳にブツブツと何か聞こえた。
ボソボソと囁く、誰かの声だ。
一瞬にして寝惚け眼が覚めた。身を固くして寝室を探る。
どこから聞こえてくるのー?
声の主はすぐに判明した。
姉だ。くーくーという軽い寝息の間間で、時々ブツブツと何か呟いていたのだった。
お姉ちゃん、変な寝言喋ってるなー。
何言ってるんだろうと耳を澄ましてみたが、どうも内容が理解できない。
しかし不思議なことに、何処かで聞いたことがある言葉の調子だった。
微かな声に神経を集中させるうち、やっとその正体に思い至った。
御経だ。ブツ切りなので中々わからなかったのだ。
聞いた覚えがあるのも当然である。
気持ち悪いなーと思ったが、寝起きの姉は凶暴だ。
気にしないことにして寝ることにした。
気持ち少しだけ、布団を離してから。
322 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2008/01/13(日) 22:16:20 ID:QXhTqPOj0
翌朝、先に起きていた姉に、昨晩のことを話してみた。
「嘘っ!私は全然知らないよ。
大方、あんた寝惚けて、変な夢でも思い違いしてるんじゃないの?」
「そうかなー・・・聞いたんだけどなー。
でも確かに、お姉ちゃんが正確な御経なんか唱えられる訳無いモンね。
やっぱり思い違いかなー?」
「いや、唱えられるけど」
「嘘っ!?」
「安芸門徒舐めないでよね」
姉は平然と言ってのけたそうだ。
「・・・私も一応、浄土真宗安芸門徒なんだけどなぁ」
彼女はそう言って、肩を竦めた。
それからも度々、夜中に目が覚めると、姉が御経を唱えていたという。
「何かねー、私が嫌な圧迫を感じると、決まってお姉ちゃんが念仏唱えてるの。
私の息苦しさって、実はお姉ちゃんが原因だったりしてー」
323 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2008/01/13(日) 22:16:59 ID:QXhTqPOj0
友人が冗談めかして笑って言うのに、思わず冷静に突っ込んでしまう。
いや、実際にそうだと思うぞ。多分それ、姉さんが原因だろ。
「何でよー?」
変なモノに好かれてたのは、どちらかと言えば姉さんだろ。
ほら、靴箱の中で握手されたりしてたじゃないか。
「あー、そう言えば確かに」
だから思うに今回の件も、その重苦しい気配だか何だかしらないが、まず姉さんの上に乗っかるんじゃないか?
で、追い払おうと無意識に有り難い御経を唱えてるんじゃね?
「ふーん・・・って、アレ? それじゃもしかして」
うむ。姉の上から逃げ出したソレが、隣で寝てるお前さんの上に移動したってコトじゃないのかな。
呆然とした顔で「・・・御経、学ぼうかなー」ようよう、それだけを口にした。
遅いんじゃないの。何も考えず、反射的にそう口にしてしまう。
彼女はその後しばらく、私からの電話に出てはくれなかった。
324 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2008/01/13(日) 22:30:41 ID:QXhTqPOj0
おこんばんはー、雷鳥です。
長らく続いてしまったマンションの話、そろそろ最終であります。
恐らく>>320のエピが引き金になってしまったんでしょうが、これ以降、友人姉妹はエライ目に遭っちゃいました。
といっても、主に妹の方ですが。
私も胃なんか痛かったッス。
まぁ現在ノンビリとカキコ出来る身分になってるというのは、もう憑かれてはいないんだろうなぁ、と判断してもいいかと・・・。
まぁラストまでマイペースで行きますので、良かったら時間潰しにでも見てやって下さいな。そりでは。
『ドアを開けてしまった』に続く
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