幽霊マンションシリーズ。
『みんな怖い思いをしてた』の続き
∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part36∧∧
149 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2008/01/05(土) 02:35:34 ID:sMAuKL180
住民から聞いた話。
冬場、寝る前に窓を軽く拭いておこうとカーテンを開けた。
中で暖房器具を使っていると、結露が割と酷かったのだという。
特に鍋などをした時には、結構な水が窓に発生していたので、そんな日は拭き取っていたのだそうだ。
雑巾片手に窓と向き合い、ギョッとする。
丁度肩くらいの高さに、手形が押されていた。
押されたばかりのようで、まだ形も崩れておらず、くっきりと浮かんだ五指の跡から水が糸を引いて垂れている。
そこの家には幼い娘がいたが、手形は娘のものより随分と大きく、かと言って大人の自分たちに比べれば小さいものだ。
見なかったことにして、サッと拭って消したのだそうだ。
「実は、その後も時々見るようになったの。
夏場は結露しないから、気付かなかったのかな。
何か居るのかしら。もぉ窓とか、戸締まり確認は本当に欠かせないよ」
戸締まり?
「そ。幽霊でも何でも、入ってくると思うと嫌じゃない」
ふむ。でも意味ないんじゃないかな。いや泥棒には有効だろうけど。
「何で?」
だって、手形から水が垂れてたってことは、窓の内側から押されたってコトでしょ。
入ってくるも何もない、もう中に居着いちゃってるんじゃないの?
彼女は目を剥いて絶句していた。
150 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2008/01/05(土) 02:37:09 ID:sMAuKL180
住民から聞いた話。
夜中寝ていると、突然“ボコッ!”という音で目が覚まされた。
窓のすぐ外から聞こえたが・・・泥棒か!?
ゴルフクラブを手に、恐る恐るベランダを覗いてみた。
誰も居ない。他にも変わった様子はない。
しかしどうにも不安だったので、クラブを横に置いて寝たのだという。
翌朝、洗濯物を干しに出た奥さんが、慌て声で彼を呼んだ。
そこのマンションは、ベランダの隣家との境に強化ボードが貼られている。
火事の時等にぶち破って逃げ出せるよう、そんな構造になっているのだが―
そのボードの下から上へかけて、子供のものらしき足跡が付いていたのだ。
指の後がくっきり残っているところからすると、裸足で歩いたものか。
一カ所だけ、ボコリと凹んで穴が開きかけている。
まるで、途中で足を踏み外したかのように見えた。
・・・昨晩、どこかの家の子供が、うちのベランダで垂直に歩いていた?・・・
頭を振って馬鹿げた想像を追い払い、管理人に連絡した。
彼の家に子供は居ない。また、ボードのあちら側は現在空き家だ。
以上のことから悪質な悪戯だと思ったのだ。
管理人は腑に落ちないような顔をしながらも、ボードを取り替える段取りをしてくれたという。
151 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2008/01/05(土) 02:38:17 ID:sMAuKL180
間もなくリフォームの業者がやって来て、作業に入った。
空き室の方から交換を行ったのだが、交換中も頻りに首を捻っている。
何か不審な点でも? 作業に立ち会っていた彼が尋ねると、こう返された。
「いやね、こちらの部屋ってずっと空いてましたよね。
以前の住人が出て行った時に、やはり自分が改修を担当したんですが。
壁紙も天井クロスも貼り替えて、クリーニングも終えてる筈なんだけど・・・
今回入ってみると、誰かが入り込んだ痕跡があるんですよ」
痕跡というと?
「床に埃が少し溜まってるんですけど、その上に幾つも残ってるんですよ。
沢山の子供の足跡が。大人のものは一つもないんですが。
一応掃除しときますね」
彼ら夫婦は今もそこで生活している。
夜中に歩く者はあれから出ていないが、どこか落ち着かないのだという。
152 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2008/01/05(土) 02:42:21 ID:sMAuKL180
住民から聞いた話。
「エレベーター乗っている時にですね、頭の上で音がしたんです。
カツンッカツンッて、誰かが歩き回っているかのような、そんな音が。
それまでにも、ここのエレベーターって変なコトかなり多かったんです。
もう気になって気になって、すぐに管理人さんに連絡したんですけど。
しばらくしてから、
『駆動部の上に異物があったようで、取り除いたんでもう大丈夫です』
って私に報告ありました。
だから、あー、私の勘違いだったのかなぁって。
まぁ確かに、普通あんな所歩いたり出来ませんよね?」
「その少し後に、丁度エレベーターのメンテの人と出会ったんです。
それで、私の体験を話してみたんですよ、笑い話として。
するとその人、こんなコトを言うんです。
『あながち間違いじゃないかもしれませんよ。
ここのエレベーター上に乗っていたのは、割れた位牌だったんです。
何でそこに落ちていたのかとか、どなたの物だったかとかは、我々にはわかりませんがね。
誰かに見つけてほしくて、位牌も一生懸命だったんでしょう』
そうして、エレベーターに向かって手を合わせちゃって」
「思わず私も手を合わせちゃいました。
でもあれから、変なコトは起こってないような気がするんですよ」
彼女はそう言って朗らかに笑った。
『対策』に続く
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