∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part36∧∧
『御神酒』
91 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2008/01/03(木) 01:35:37 ID:TBYa9b350
友人の話。
彼は神社の氏子になっており、毎年年の瀬から新年に掛けて、社の世話をしている。
新年の儀を終えてからは、参拝客に御神酒を振る舞うという。
「山中の小さな神社なんだけどね。意外に参拝する人が多いんだ」のだそうだ。
参拝客の中には飲めない人も居るが、
そういう人には「縁起物だから」と一口だけ付けて貰ってから、猪口を返して頂くようにしている。
残った御神酒を足元のバケツに掃かして、洗いの担当に回すのが彼の受け持ちだ。
「それがね、時々おかしいんだ」と彼は言う。
「バケツの中身が明らかに減っているんだ。もうパッと見でわかるほどに。
飲み残しなんて誰も手を付ける訳ないし。
大体、バケツに触る者がいれば俺の目に留まらない訳ないし。
山の神様が飲んでらっしゃるのかなぁ?」
神様には、別にちゃんとした御神酒を差し上げてる筈だろ。
「あぁそうだった。確かに年が明けると同時に献上してたわ。
じゃぁ、何が残り酒に手ェ付けてるのかなぁ?」
ふむぅと悩ましい顔をした。
しかし別に害があるものでもないので、見て見ぬ振りを続けているのだという。
『石灯籠』
92 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2008/01/03(木) 01:36:56 ID:TBYa9b350
友人の話。
彼は神社の氏子になっており、毎年年の瀬から新年に掛けて、社の世話をしている。
数年前、風が強くて石灯籠に火が点せない時があったのだという。
仕方ないやと諦めて、参拝の客を迎える準備に向かう。
年も明けた数時間後、参拝の人並みも一段落し、片付けに入った。
熾火に水を掛けて消し、社の外に出しに行った帰り道。
おや? 暗かった灯籠に、ちゃんと明りが点っている。
二つある内の片方にだけだったけど。
「あぁ、誰かが点け直してくれたんだな」
そう考え、少々バツが悪い思いをしていると。
いきなり、明りがフッと宙に浮かんで、フラフラと踊り始めた。
少しの間漂ってから、もう一つの暗い灯籠の方へ舞い降りる。
「・・・あれは普通の火じゃないな」
取りあえず手を合わせてから、仕事に戻ったという。
次の年からは、灯籠の穴を改良し、風が強くても火が消えないようにしたそうだ。
「思うんだけどね。
あそこの社で見られる火の内幾つかは、普通の火じゃないかもしれん。
まぁ御社に出る類のモノだから、悪いモノじゃないと信じてるけど」
『管弦の音楽』
93 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2008/01/03(木) 01:37:52 ID:TBYa9b350
友人の話。
彼は神社の氏子になっており、毎年年の瀬から新年に掛けて、社の世話をしている。
代替わりして新しく氏子に加わった後輩があり、二人で組んで準備に掛かった。
忙しく動いていると、この後輩が奇妙なことを言う。
「へえ、ちゃんと管弦の音楽なんか流すんですね。
雰囲気出てるなぁ。本格的だなぁ」
頻りにそう感心しているのだが、彼の耳には何も楽らしき調べは聞こえない。
「え、音量小さいけど聞こえるでしょ? 拝殿の隣の舞台から。
あそこにスピーカーとか仕込んでるんじゃないんですか?」
そのような仕掛けなど記憶にない。
後で確認してみたが、管弦楽が聞こえている者は他にいなかった。
後輩は驚いて目を剥いていたが、その後それを口にすることはなくなった。
「あいつ、別に信仰深い訳じゃないんだけどなぁ。
何であいつにだけ聞こえるんだろ?」
今年も、彼は後輩と二人組んで、年始の世話をしているそうだ。
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