幽霊マンションシリーズ。
『数日後』の続き
∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part33∧∧
266 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2007/04/11(水) 22:27:44 ID:9SIXv8960
寝ていると姉に起こされた。
時計を見ると、まだ夜中と言っていい時間帯だ。
「何ー? 何なのー?」
「しーっ」
声を出さないよう指を一本立てた姉が、こちらへ来いと手招きをする。
仕方なく姉について行き、少しだけ開いた扉の前へ立ってみた。
向こう側はダイニングだ。
ん? 何か音がしてる。
一遍に目が冴え、息を殺して様子を窺った。
目が慣れてきたが、薄暗いダイニングには何も見えない。
しかし何かの気配が感じられる。
コトン、と小さな音がして、フッと気配は消えた。
少ししてから姉が明かりを点ける。
テーブルの上に団栗が一個だけ落ちていた。
寝る前にはなかった物だ。
267 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2007/04/11(水) 22:28:23 ID:9SIXv8960
「見た、今の」
固い声で言う姉に驚く。何か見えたの?
「えっあんた見えなかったの。
何か毛むくじゃらで丸いもふもふしたのが、テーブルの上で震えてたでしょ?」
「そんなの何も見えなかったよー」
「嘘っ!?」
「・・・トトロ? トトロなの?」
「あんなに可愛くない。大体、顔も手も足もないんだから。
まるで阿寒湖のマリモがぶるぶるしてた感じだったよー」
「・・・というモノがうちに出た訳なのね。何なのか正体わかる?」
・・・わかる訳ないだろぉ。
男と女が仲睦まじく食事している最中に、なぜこのような話になるのか―
私は頭を抱えたくなった。
268 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2007/04/11(水) 22:29:33 ID:9SIXv8960
珍しく日が高いうちに帰ってきた日のこと。
エレベーターを降りて、自分の部屋へ向かっていると、先の曲がり角に何か見えた。
髪が長い女性の頭だけが、ヒョコンと突き出されてこちらを見ている。
一目見て目を逸らした。真っ当なモノじゃないと判断したから。
「だって、顔が突き出ている高さは、ほぼ天井と同じくらいなんだもの。
一体身長がどれほどあるっていうのよー。
おまけに、嫌になるくらいに無表情だったし」
目を向けないようにして、自分の部屋に何とか入った。
その後も度々見かけらしいが、無視し続けたのだそうだ。
269 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2007/04/11(水) 22:31:56 ID:9SIXv8960
晩御飯を食べ終わって、一人まったりとテレビを見ていた時のこと。
姉は風呂を使っている。
と、視界の隅に何か動く物が見えた。
お姉ちゃん、もうお風呂から上がったのか。今日は早いー。
・・・あれ? でもバスの戸が開く音なんてしなかったような・・・
そう思い洗面所を見やってから硬直する。
洗面所には何もいなかった。
それなのに、鏡に女の姿が写っている。
髪の長い女が、怒ったような顔で睨んでいた。
思わず、目が合ってしまったという。
それって、お前さんのことを直で睨んでいたってことじゃないか。
「嫌だよー違うよー、目が合ったのは偶然だよー!」
私が指摘すると、猛然と頭を振って否定する。
「とにかく、そこで悲鳴を上げちゃったのね。
結構大声だったみたい。お姉ちゃん、お風呂から飛び出してきたから」
事情を聞いた姉は、またぁ?というようにゲンナリとした顔になったらしい。
恐らくこの話を聞かされていた私も、似たような顔になっていたと思う。
ひょっとしてさ、その髪の長い女って、誰か知り合いの顔してなかったか?
思うところあって聞いてみたのだが、再び否定された。
「ううん、岩崎宏美系の上品な美人だったよ。
ああいう雰囲気の知り合いはいないなぁ。
いたら多分口説いてる」
・・・余裕あるじゃねぇか。
そう思ったけれど、口には出さなかった。
『部屋の中に入り込んできた』に続く
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