幽霊マンションシリーズ。
『変わった部屋』の続き
∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part33∧∧
81 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2007/04/04(水) 21:00:57 ID:afoyeEk/0
(幽霊マンション、続きです)
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そんなある晩、寝ているとカリカリという音で目が覚めた。
猫が爪で固い物を引っ掻いているような音だ。
何が音を立ててるんだろうと、明かりを点ける。
音は窓の方から聞こえている。そこに何かがいる様子は見えないが。
窓を開けてみると、網戸がカリカリと音を出しながら震えていた。
と、いきなり、網戸の下部分がグッと内側に凹んできた。
まるで見えない猫に押されたかのように。
息を殺して見ていると、スッと網戸は元に戻る。
そして再びカリカリと引っ掻く音がし始めた。
出来るだけ静かに窓を閉め、無視することにして布団に戻る。
平和そうな顔で寝ている姉に少しだけ腹が立ち、その鼻を塞いでやった。
姉が藻掻き出すまで塞ぎ続け、それから寝たのだという。
82 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2007/04/04(水) 21:02:32 ID:afoyeEk/0
夏もすっかり終わる頃、親戚が幼い姪っ子を連れて遊びに来た。
というか、姉に縁談を持ってきたものらしい。
姉が親戚と押し問答している間、彼女が姪の相手をすることになった。
公園にでも行こうかと準備して靴を履いていると、姪はいち早く外に飛び出していく。
待ちなさーい、と声を掛けてホールを見たが、幼い親族の姿は見えない。
あれ、もうエレベーターに乗ったかな? ホールに足を進めると、その向こうの非常階段へ通じる扉が開いて、姪が現れた。
「ダメだよ、一人で勝手に出歩いちゃ」と注意する友人を遮って、姪がこう訴える。
「あのね、あの向こうからね、女の人がおいでおいでって呼んでたの」
女の人? 呼んでた?
「うん。だから近くによったんだけど、とても怖いから帰ってきちゃったの」
誰がいるのかしらと気になって、非常階段へ進んでみた。
人っ子一人いない。いないねぇと言う友人に向かい、姪は「あそこにいるじゃん」と上の踊り場を指さした。
ハッとした。ボヤッとだが、あの黒い影が佇んでいた。いつものように敬礼している。
もしかして○○ちゃん、その人の姿が、はっきり見えるの?
「うん、髪の長い女の人がニコニコ笑ってるよ。
今、私たちに向かって、おいでおいでしてる」
・・・あー、あれって、敬礼していたんじゃなかったのね・・・
83 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2007/04/04(水) 21:03:43 ID:afoyeEk/0
鳥肌が立った友人に向かい、姪は更にとんでもないことを言い出した。
「ね、本当に怖いでしょ。だって頭が半分無いんだもん」
うわわわわっ!
慌てて姪の手を引き、屋内に駆け戻る。
絶対近よらないようにしようねと固く約束し、エレベーターで下に降りたそうだ。
その日以降、非常階段を使う際には、出来るだけ八階の踊り場を見ないようにして通り抜けていたという。
凝視する私に向かい「いやぁ自分には影しか見えなかったしね。想像しなかったらそんなに怖くなかったよ」と、
友人は平然と言った。
意外に剛胆な女なんだなぁ―ちょっと認識を新たにした私だった。
84 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2007/04/04(水) 21:05:13 ID:afoyeEk/0
その次の日曜日、姉妹揃って朝食を取っていた時のこと。
ピンポーンと呼び鈴が鳴った。
はぁい、と姉が出て行くと、大勢の声がドアの向こうから聞こえてくる。
誰だろうと友人も顔を出すと、隣近所の奥さんたちがズラリと並んでいた。
「あなたたち、大丈夫? 何もなかった?」と口々に聞いてくる。
はい? 何のことでしょう?
「丁度今ね、このドアの前に女がいて、中の様子を窺ってたのよ」
え、どんな女性でした?
「普通じゃないわ。身長が二メートルは軽く超えていたもの」
えぇ?
「こう、背を屈めてね、ドアの上の明かり採りから」
「じぃっと中を食い入るようにしてピッタリ張り付いてたの」
えぇーっ!?
「あたしが一番始めに見かけてね、怖いから他に人を呼びに行ったんだけど、
戻ってきたら誰もいなくなってたの」
それで心配になって、皆一団で呼び鈴を押したのだという。
取り敢えず「教えてくれてありがとうございます」と姉と二人で礼を述べる。
いや何もなければいいんだけど、と奥さんたちは落ち着かないような目のまま自分の部屋へ戻っていった。
「・・・御守り、買ってこよっか」
「そーだね」
朝食の続きを取りながら、そんな会話をしたのだそうだ。
85 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2007/04/04(水) 21:21:44 ID:afoyeEk/0
どーも、雷鳥です。
仕事の合間に休憩がてら投下しますです。
もうちょっとだけこのマンション話、お付き合い下さいませ。
趣味に合わないって御方は、どうかスルーしていただきますよう・・・。
>>17
>>22
えー、このマンションが建っているのは、
山裾と書きはしましたが、もう立派な山の中であります。(住んでいる方には失礼ですが・・・)
他に建物といえば、やはり大きなマンションが三物件ばかり。
一番近いコンビニは木々に挟まれた峠道をしばらく下った所に一件だけ、
というある意味陸の孤島みたいな、不思議な立地です。
車で十五分も走れば、夜でも明るい百万都市なのですが、
マンションの辺りは外灯も少なく、夜ともなれば正に、山中異界って言葉を実感できます。
大きな都市に住んでいる方には、ピンとこないかもしれませんね。
しかし、このような場所の怪談も、私的には山話の一つなのです。
深山幽谷に限らず、不思議でちょっとゾッとする話は、里山というような人界のすぐ近くでも耳に出来るのですよ。
というか、基本的に目撃する人がいないと、この手の話は語られませんので、
里山の怪談の方が採取できる数は多いかと思います。
ちょっと言い訳めいてしまいましたが、一つこのスレで語らせていただくことをご容赦下さい。
・・・話が進むと、山に住むモノノケネタまで絡んできますので。
いや、純粋な意味ではモノノケではないのかもしれないのですが。
これは私的にも意外で、ちょっと寒気がしました。
『数日後』に続く
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