幽霊マンションシリーズ。
『とある山裾に造成されたマンション』の続き
∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part31∧∧
517 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/12/24(日) 16:34:12 ID:68UtPqjc0
(Part30からの、言わば続き物です)
友人の話。
それからもエレベーターが使用できず、非常階段を使う夜が度々あった。
第三者から見ればひどく不便だろうと思うのだが、その当事者は慣れてしまったのか姉妹共々ケロッとした顔をしていた。
いつものように非常階段を昇っていたある夜。
七階に入る非常ドアを開けようとしていると、何か動く物が視界をかすめた。
不審者!?
ドキッとして動きのあった方、八階へ続く踊り場へ目をやった。
人ではなかった。何か黒い霞のような影が、そこにぼんやりと佇んでいる。
そこにも外灯が点いていたが、なぜかその姿をはっきり見ることが出来なかった。
じぃっと見ていると、右手に当たる箇所の影がゆっくりと持ち上がり、
頭と思しき付近でゆらゆらと定まった。まるで敬礼しているみたいに見えたという。
ひどく気味が悪かったが無視することも出来ず、「あ、どーも今晩は」などと適当に挨拶してから屋内に入った。
その後も何度か敬礼してくる影に遭遇したが、その度々挨拶して逃げていた。
ちなみに姉の方は、この影を見たことはないそうだ。
518 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/12/24(日) 16:34:55 ID:68UtPqjc0
このマンションに越してきて一月も過ぎた頃。
彼女には、どうにも合点が行かないことが生じていた。
靴箱の中に入れていた靴や用具の配列が、微妙にずれているのだ。
初めは姉が動かしたのだろうと思っていたが、ある日姉が「私のブーツ動かした?」
と聞いてきたことで発覚した。
聞けば姉の方も、靴箱の中身は妹が動かしていると信じていたのだそうだ。
思わず二人で顔を見合わせたが、その時は気のせいだろうということになった。
姉妹以外の誰かが室内に入ってきている、そんなことは考えたくなかったのだと。
そんなある朝、玄関から「ぎゃぁっ!」と大きな悲鳴が聞こえてきた。姉だ。
どうしたん?と慌てて駆け付けると、姉は靴箱の前でへたり込んでいた。
「今ね、今ね、奥のクリームを取ろうとしたらね・・・」
取ろうとしたら?
「・・・誰かに手を握られた」
一瞬固まったが、次の瞬間二人して靴箱の扉を取っ払って中身を掻き出していた。
何も怪しい物などなかった。何度確認しても二人が入れた物ばかり。
「疲れていたんだよね、多分、きっと」
そういうことにして、その場は取り繕ったのだという。
それからも度々、姉は玄関で「おぉっ!」とか「ぬわぁっ!」などと叫んでいた。
お姉ちゃん、気に入られちゃったのかな?
彼女は他人事みたいに、首を傾げながらそう口にしていた。
彼女自身にしてみると、怪しい何かに手を握られたこともなく、
逆に散らかしていた靴箱を整理してくれたこともあったみたいで、
“アレはそんな悪いモノじゃない”と認識していたのだそうだ。
519 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/12/24(日) 16:36:03 ID:68UtPqjc0
ある晩、残業で遅くに帰宅した時のこと。
玄関を開けると、そこにパンパンに詰まったゴミ袋が二つ置かれていた。
あ。そういえばお姉ちゃん留守にするって言っていたっけ。
明朝に出しておかないと、しばらく生ゴミと一緒に生活しなくてはならない。
でも、明日は昼から出勤なのよね・・・朝寝したいなぁ。
時刻は丁度、深夜の二時。
周りは山ばかりということもあって、ゴミ捨て場のある辺りは真っ暗だ。
怖いが、逆に考えれば、見られることも少ないだろう。
幸い、今夜はエレベーターにあの女も出なかった。
しばし迷って、いけないとは思ったが、その足でゴミを出しに行くことにした。
両手にゴミ袋を抱えてエレベーターのボタンを押す。
上がってきた箱の中に誰も居ないのを確認してから、入ろうとしたその時。
いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
大きな悲鳴がホールに響いた。足を宙に止めたまま、彼女は硬直してしまう。
再び悲鳴が轟く。エレベーターの箱と壁の隙間から聞こえてくるようだ。
エレベーターシャフトの中で、誰かが泣き叫んでる!?
慌てて踵を返し、自分の部屋に飛び込む。
少しだけ顔を出して見ていたが、不思議なことに他の住人は誰も出て来ない。
あんなに大きな声が聞こえていないのだろうか?
やがてエレベーターの扉は閉まり、下の階へ降りていった。
素直に諦めて、その朝は早起きしてゴミを出しに行ったという。
520 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/12/24(日) 16:39:38 ID:68UtPqjc0
この山裾の幽霊マンションのお話、あともう少しほど続く予定です。
(この二ヶ月で追加エピソードが出てきたので、ちょっと延びました。汗)
今書いたぐらいのネタなら、そうも神経に来ないんですが。
はぁ。
また明日にでも続き投下しますデス。
それではまた。
『エレベーターホールで正体不明の悲鳴』に続く
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