∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part33∧∧
『ヤモリ』
423 :本当にあった怖い名無し:2007/04/14(土) 18:55:05 ID:R/SwPR9i0
友人の話。
彼の実家は山奥の旧家である。
子供の頃から年に何度かの割合で、尻尾を見るのだという。
暗く長い廊下を歩いていると、先の闇中でズルズルと這う物がある。
どうみても蜥蜴の尻尾。灰色で柔らかそうな。
ただ、大人が一抱え出来そうなほどの大きさがあるけれども。
追いかけると、するりと角を曲がって見えなくなってしまう。
駆け付けた角の先には、動く物など何もいない。
そんなことが度々あったのだと、彼は言う。
家人によると、ヤモリサマの尻尾だろうということだ。
昔からこの家に住まう守り神だと聞かされた。
「ヤモリって多分“家守”って字を当てるんだろう。
でも本当に守ってくれているかなんて、実際誰にもわからないけどな」
今でも里帰りした折、見ることがあるらしい。
「出なくなったらなったで、ちょっと寂しく思うかもしれないね」
生真面目な表情で、彼は呟いた。
『オーイ』
424 :本当にあった怖い名無し:2007/04/14(土) 18:55:39 ID:R/SwPR9i0
同僚の話。
村外れの山道を歩いている時のこと。
木々の間から「オーイ」と呼ぶ声が聞こえてきた。
不明瞭だが子供の声のよう。どこか必死な調子がある。迷子か?
「どうしたー?」
呼び返しても、それに対する返事はない。
ただ「オーイ」と呼ぶ声が繰り返すのみ。
声を頼りに下草を掻き分けて行くうち、小さな沼の辺に出た。
対岸に小さな影がちょこんと、膝を抱えて座り込んでいる。
大きさは幼稚園児ほど。全身が緑色でヌメヌメとしているように見えた。
思わず雨蛙を連想したが、体付きや顔はどこかしら人間くさい。
固まった彼を真っ黒な目でチラリと見やり、直ぐに興味を無くした様子で、
「オーイ」と森の奥に向かって再び呼び始める。
近よるのも躊躇われ、そのまま足を返し退散したのだという。
後で村の長老に聞いたところ「はぐれ河童であろう」と言われたそうだ。
親とはぐれてしまった河童の童が、一生懸命に親を呼んでいるのだと。
普通は声が聞こえるのみで、その姿を目にすることはまずないらしいが。
「あいつ、ちゃんと親御さんに会えたのかな」
今でもそれが気にかかっているのだという。
『裏山で一人遊んでいた』
426 :本当にあった怖い名無し:2007/04/14(土) 18:56:31 ID:R/SwPR9i0
後輩の話。
彼女が幼い頃、実家の裏山で一人遊んでいた時のこと。
うっかり躓いてしまい、そのまま顔面から地面に倒れ込んでしまった。
その刹那、落ちる頭の真上で「ぶんっ」と音がして風が巻く。
まるで何か重たい物体が、頭があった空間を薙いだかのように。
地面で強かに顔を打ち、息の止まった彼女の耳に。
誰かが「チッ!」と舌打ちする声が聞こえた。
慌てて起き上がったが、辺りには人っ子一人いなかった。
堪らなく怖くなった彼女は、泣きじゃくりながら山を転がり下りたのだという。
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