∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part45∧∧
『ゴンボスジ』
153 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/07/21(火) 20:59:31 ID:wmv7mFFi0
知り合いの話。
彼女の田舎の山村には、ゴンボスジと呼ばれる家があったのだという。
その家系は呪詛をよくしていたと言われ、恐れられていた。
ゴンボスジは畑に呪いを掛ける。
呪われた畑の根菜類を引き抜くと、藪睨みの目玉が幾つか付いていて、抜いた者を睨み付けてから消える。
睨まれた者は、程なくして死んでしまうのだそうだ。
ゴンボ(牛蒡)がよく呪われたそうで、故にゴンボスジ(牛蒡筋)と呼ばれるようになった、そう伝えられている。
大層恐れられたが、何故か避けられてはいなかったようで、村はよくゴンボスジの娘を嫁に迎え入れていたと聞く。
そしていつの間にか村の中に溶け込んでしまい、ゴンボスジは途絶えたという。
今でも村では「嫁を取ったら、絶対怒らせるな」と伝えられているそうだ。
嫁がゴンボスジの血を引いていれば、相手にその意志が無くとも呪われるからだと。
ゴンボスジというのは女系の家で、まず女しか産まれなかったとも伝わる。
「・・・という、まぁ言い伝えレベルの話だけどねー」
そう言って彼女はカラカラと笑った。
相槌を打ちながら「この人は怒らせないようにしよう」と思う私だった。
関連話:
『牛蒡種』『網切り』
154 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/07/21(火) 21:00:18 ID:wmv7mFFi0
山仲間の話。
シーズンオフに、一人キャンプ場で設備メンテナンスをしていた。
片付けが終わる頃には暗くなっていた。
続きは明日にしようと一人用テントに向かう。
中に入ろうと、入り口の幕に手を伸ばしたその時。
サァーッという軽い音と共に、内側に垂れていたネットが真横に裂けた。
裂かれた幅は三十センチほど。
鋭利な刃物で切ったかのように、切断面は非常に滑らかで綺麗だった。
幸い、それ以上テントが破壊されることはなかったという。
「あそこのキャンプ場、網切りがいるぜ。信じる信じないは勝手だけどな」
久方振りに会った飲み会で、彼はこんな話をしてくれた。
『登山者の捜索』
155 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/07/21(火) 21:01:05 ID:wmv7mFFi0
知り合いの話。
運悪く雪崩に巻き込まれた登山者がいると連絡が入った。
山小屋に詰めていた彼も捜索に加わったという。
雪中にゾンデ棒を突き刺して探っていると、突然ゾンデが固まって動かなくなった。押しても引いてもびくともしない。
驚いていると、何かに掴まれたみたいにゾンデが引っ張られる。
慌てて手を構え直した次の瞬間、手の中の感触は通常のものに戻っていた。
何となく予感がして、その下を掘ってみた。
果たして、探していた遭難者の遺体が出てきたそうだ。
しかし、遭難者が埋まっていたのは4m以上も下の雪中だった。
その時使用していたゾンデ棒の長さは精々3m程度。
一体何がゾンデを引っ張っていたのか。
「俺はここにいるぞって、気が付いてほしかったんだろうな」
どこか寂しそうに彼はそう口にした。
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