∧∧∧山にまつわる怖い話Part4∧∧∧
『水面に映った』
940 :聞いた話:03/12/16 00:53
親戚に聞いた話。
幼い日の出来事。
山道の水たまりを覗き込むと、こちらに背を向けた人の姿が見えた。
後ろを振り返ったが誰も居ない。
そこで、拾った石を水たまりに投げ込んでみた。
すると、向こう側の人が驚いたように振り返り、こちらを覗き込むような格好に。
笑顔で手を振ってみると、引き攣ったような顔がスッと引っ込んだきり、
気が付けば、水面に映った自分の顔が見つめ返していた。
『山で名を呼ばれる』
941 :聞いた話:03/12/16 00:55
寄り合いの場で聞いた話。
一人の若者が山で仕事をしている最中、どこからか自分の名を呼ばれた。
山で名を呼ばれても返事をするな、というのが村の言い伝えだったが、
とっさに「おーい!」と返事をしてしまった。
その日の夜、山の方から若者の名を呼ぶ声が村中に響き渡った。
村の誰もが聞き覚えのない、甲高い男の声。
心配した近所の者が若者の家を訪れたが、もぬけの殻だった。
以来、若者の消息は杳として知れず、
村では、本当の名ではなく「忌み名」を用いる習慣がしばらく続いたという。
『森の形』
943 :聞いた話:03/12/16 00:56
学生に聞いた話。
ある研究者が、海外の原生林を調査した時の話。
現地の案内人が同行していたのだが、どういうわけか矢鱈に迷う。
それを問い質すと、
「ずっと人が入らなかったので、森の形が定まっていないんだ」
といった意味の返事が、通訳を介して返ってくる。
そんな馬鹿なことがあるか。
そう考えた研究者は、地形や木の位置や形状に目印にして地図を作ろうとしたが、
すぐに、それが不可能であることを思い知らされた。
小さな池ほどもある巨大な水たまりが、僅か数分で消え失せ、
さっきまで大きく開けていた頭上の空間は、いつのまにか鬱蒼とした枝葉で覆われ、
周囲の木立は、一寸目を離すうちに微妙に変化していく…
刻一刻とその姿を変える原生林に、研究者は眩暈にも似た感覚を覚えたそうだ。
後日、検証のために、同じ場所で時間を隔てて撮影した写真を見比べてみたが、
互いに全く別の風景にしか見えなかったという。
『大きな足』
944 :聞いた話:03/12/16 00:57
村役場の職員に聞いた話。
地図を片手に、山奥にある水道施設の点検に行った時のこと。
昨夜のうちに降り積もった雪を踏みしめて、細い山道を歩く。
足元のまっさらな雪面に見とれるうちに、気が付くと分岐点を通り越していた。
慌てて引き返そうとして振り向いたその場で足が止まった。
細い道の真ん中、新雪の上に自分の足跡と、もう一つ大きな足跡がある。
背後から後を付けるかのように、ピッタリと寄り添う足跡。
辺りには何の気配も感じられなかったが、車のところまで走って引き返した。
その足跡は人間離れした大きさではあったものの、ちゃんと靴を履いていたそうだ。
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