怖い話や不思議な話をまとめて紹介するブログ

怖い話＆不思議な話の投稿掲示板
投稿者「NO NAME ◆IO1kFZWg」 2023/04/06

私がある地方で食品メーカーの営業をしていた頃の話です。
部下が担当するスーパーから連絡があり、購入したAさんというお客様から商品に毛髪のようなものが入っていたとクレームが寄せられたとのことでした。
怒り心頭のようでしたので、スーパーの店長様と部下、私でその日のうちに謝罪に伺いました。
（余談ですが毛髪の混入は良くあることで、エアシャワーなどの対策を行っても発生してしまいます。今回は長さ２ミリ程度のまつ毛でした）
お客様のお宅は山の中にあり、旅館のような立派な建物でした。
後で聞いたところ、以前は夫婦で旅館を経営していたが、現在は主に林業や工事関係者のような長期滞在者や学生の合宿などを受け入れる宿泊所になっている。今の時期はオフシーズンなのでAさんが一人で住み込んで管理し、奥さまは実家に戻っているとのことです。
少し間を置いて怒りが冷めたのか、手土産を渡して改めて謝罪し、後日原因究明と是正の報告書を持参することで話がまとまりました。
部下は新婚で三日後にハネムーンを控えていたので、その後は私が引継ぎました。クレーマーのような変な相手でなくてよかったとホッとしたのを憶えています。
一週間後に毛髪の鑑定結果と諸々の報告書を持って、本社の品質管理担当のＢと私でA様の自宅を訪問した時のことです。
始終和やかなムードでしたが、時折何か重い金属のようなものをゴーンゴーンと鐘のように叩く音が遠くから聞こえるのが気になっていました。
そろそろ話を切り上げてお暇しようとした時です。ひときわ大きいゴーンという音が聞こえました。Ｂにも聞こえているようです。
Ｂが「どなたかいらっしゃたのでしょうか？お忙しいようなのでそろそろ失礼します。今後も弊社の商品を・・・」と切り出すと
Ａさんは「この音聞こえるの？」と少し驚いたようでした。
私が「何か工事か来客の方の音ではないのでしょうか？」と返すと
Aは緊張した顔で「・・・二人はお化けとか信じる？」と聞いてきました。
突然のことで私とBは目を丸くして見つめ合ってしまいました。
この宿泊所には別館があり渡り廊下で繋がっているが、南京錠をかけた扉で仕切られており普段は往来できないようになっている。別館に行くと何かに見られているような視線を感じるし、不気味な黒い影なようなものを見ることもある。たまに火災報知機や電気関係の点検で業者が別棟に行くが、皆気味が悪い思いをしてしてしまう。ゴーンゴーンという音は二か月ほど前から突然前触れなく鳴るようになった。どうも別館側からなにかが扉を叩いているようだ。その音がするようになってからAさんも別館には行っていない。
そのような話をされました。
長い沈黙の後、私はオカルト話は好きだが幽霊は信じていませんと言いました。
Bは何か動物でも住み着いているんじゃないかと言っていました。
私は嫌でしたがなぜか扉の前まで行ってみようという話になり、渡り廊下に続くドアの前まで来ました。
ドアが開けられると雰囲気のある金属製の銀色の扉が向こうに見えました。渡り廊下に踏み出した瞬間、何かに見られているようなそんな感覚を視界の隅に感じていました。すぐにでも戻りたい気持ちでいっぱいでしたが、三人とも無言で汗をびっしょりとかきながら扉の前まで歩きました。
Aさんがポケットから鍵を取り出し南京錠を開けようとしています？
（はぁ？扉の前に行くだけって言ったじゃん？）と思いましたが言葉がうまく出ません。
Aさんは震える手で何度も鍵を落としそうになりながら南京錠に鍵を差し込んだその瞬間、別館側からボソボソと話し声のようなものが聞こえた後、ドドーンと何かが扉に当たる音が聞こえ、三人は足がもつれながら渡り廊下の本館側まで走りました。
ドドーンという音はその一回限りでしたが三人とも目を見開いて固まっていました。
Aさんが「鍵を差し込んだままだから取りに行く」と言い、うおお！と気合をいれて素早く鍵を取って帰ってきました。
自分で何で鍵を開けようとしてたのかわからんと言っていました。
三人とも汗びっしょりでしたので、水を頂いて少し落ち着いてからBと共にその場を後にしました。
事務所に戻る前にクレーム発生元のスーパーに立ち寄り、店長様に無事クレーム処理が終わったことを伝えたところ、店長様に何か他に変わったことなかったかと聞かれ、事の顛末を喋りました。
店長様は「最初にあそこに入った時、ずっと耳鳴りがしていた。そんなことがあったんですね。パートさんに聞いたら良くない噂があるところだったから、お祓いに行ってきた方がいい」と仰っていました。
良くない噂がなにか気になりましたが、私もBも早く帰りたかったので聞かずに笑ってごまかしていました。
その後、私も本社に戻ったBもハネムーンから帰った部下も特にお祓いにはいっていませんが、何事もなく過ごしています。ただ40年ほど生きてきて初めての心霊体験らしい心霊体験でしたので投稿させて頂きました。ただBのいう通り動物だったのかもしれません。




次の記事：『神社で遊んでくれたお姉さん』
前の記事：『修学旅行で函館にいった』