【新】海・山にまつわる怖い話・不思議な話 1
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670 :本当にあった怖い名無し:2018/06/11(月) 19:26:50.58 ID:GXGKmeJX0.net
石じじいの話です。
四国には遍路(辺土)巡礼というものがあり、じじいが住む集落の近くにも札所がありました。
札所とは、スタンプラリーのスタンプポイントのような寺院です。
昔から遍路みちというお遍路さん(巡礼をする人々をそう呼ぶ)が通るルートがありました。
山を歩いているとじじいもお遍路さんによく会ったそうです。
その日も夕刻に近く、じじいは山を降りていました。
よく開けた山道を下っていると前からお遍路さんが登って来ました。
「こんな夕刻に山を登るとは?山中で野営だろうか?」と思いました。
しかし、じじいは根本的な疑問を持ちました。
ここは遍路路ではない。この道をいっても札所にはでない。かなりきつい山道で山奥の標高の高いところに行く道だ。
その男性はかなり必死で登っていて、近づいて来るじじいに気がついても歩調を緩めず歩いています。
じじいが声をかけました。
『こんにちは、せいがでますのう、まだ山にのぼんなさるかな?これからやったら暗ろうなりますろうが』
その男性は息を弾ませて、『ああ、ありがとうございます。その人が次の札所の近くまで案内してくれるので大丈夫です』
[はあ?そがいな人?わしら以外にひとおらんがな??]
671 :本当にあった怖い名無し:2018/06/11(月) 19:27:11.11 ID:GXGKmeJX0.net
じじいは怪しんで、その男性を呼び止めて、そのような案内人がどこにいるのか?と尋ねました。
「ほら、あそこに、待ってくれています」とその男性が指差した先には、誰もいない。
じじいは、敵愾心を持たれないように諭しました。
『よう見てみんさい。あそこに人がおるかな。よーに見てみんさい』
『はあ、あそこにおられますが。ちょっと不機嫌そうにしてらっしゃいます』男性
じじいは、そこで般若心経を唱え始めました。
男性は非常に訝しんでいたようすでしたが、急にはっと後ろに退き、自分でも般若心経を唱え始めました。
二人で必死に唱えたそうです。
真っ白な顔をしたその男性は、急に読経をやめました。
『どうかな、あの人、見えんようになったかな?』じじいが尋ねると、その男性は大きく頷いて、そこに座り込みました。
じじいはその男性に、この路がまちがったルートであること;自分が正しい遍路路に案内すること;
しかし、この時刻では夜になって真っ暗で往生すること;を説明して、自分の家に泊まってはどうか?と提案しました。
男性はそれに同意して、二人は麓から少し離れたじじいの家に向かいました。
672 :本当にあった怖い名無し:2018/06/11(月) 19:27:37.17 ID:GXGKmeJX0.net
簡単な夕食をとって、そのお遍路さんの身の上などを聞かせてもらったそうです。それはなかなか厳しいものでした。
話はさっきの「案内人」のことにうつりました。
あれはなんだったのだろう?あらためて考えてみると、
その男性は、その案内人の性別も、顔も、風体も覚えていなかったそうです。
『タヌキにでもだまされたのでしょうか?』と男性。
『そがいなもんやったら、まあ、ええですがのう・・・』じじいはちょっと嫌な感じがしていたそうです。
禍々しいものについては、その正体を知ろうとせず、追求せず、触れないようにすることにしました。
「自分の心の中に、その良くないモノ」をはっきりと形づくってしまうのを避けるようにと。
じじいと男性は寝る前に、いっしょに観世音菩薩普門品を唱えたそうです。
次の日、じじいは男性を正しい遍路路の入り口まで案内しました。
男性と別れて山をおりて帰る時、さらに一人のお遍路さんが歩いて登って来ました。
『遍路みちは、むこうの三叉路の左やけん。左ですで。間違わんようにいきんさいよ。きいつけて。左よ』
と、じじいは声をかけましたが、そのお遍路さんはじじいを全く無視して歩いていったそうです。
『あの山に、なんかようないもんがおったんかのう?』
『そうよ、あの最後に会うたお遍路さん、男か女かわからんかったい。顔見た思うけど』
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