∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part70∧∧
『寡婦地蔵』
732 : 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2013/08/20(火) 19:14:50.51 ID:dTHcu64U0
友人の話。
彼女の地元には、一寸変わった地蔵さまがあるのだという。
街外れの山を少し上った所に祀られているその地蔵さまは、
人の願いをまず確実に叶えてくれるのだというのだ。
ただし、大人の女性限定。
ここに女性が願掛けに行くと、その夜中に何者かが家の寝床に侵入してきて、
あんな事やこんな事をウリャウリャされてしまうのだそうで。
それと引き換えに願い事が叶うのだと言われている。
何というか、後家さんに大層人気があったといい、
その為かこの地蔵さま、昔から『寡婦地蔵』とか『ヤモメさん』などと呼ばれていた。
「君は願掛けしたことあるの?」と私が聞くと、
「私は絶対に近寄らない」と無表情に返された。
聞くんじゃなかった。怖かった。
『クサマラ』
733 : 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2013/08/20(火) 19:15:31.68 ID:dTHcu64U0
知り合いの話。
彼の実家の山には、その昔クサマラと呼ばれた化け物が出ていたそうだ。
当時そこは実家の土地ではなかったらしいが、そこの山道で野宿をすると、この怪に襲われてしまうということだった。
ただし、大人の女性限定。
被害者の話では、丈の高い草むらがガサガサと揺れると、
姿の見えない何かがそこから飛び出してきて、あっという間に押し倒されてしまい、
あんな事やこんな事をウリャウリャされてしまったそうだ。
しかし何故か、クサマラを責めたり恨んだりする者はいなかったらしい。
「テクニシャンだったのかどうか知らないが、まぁ性に関しては大らかな時代だったんだろう。
しかしあまりに噂が広まったんで、地元で風聞が悪いという話になってしまい、
結局うちの先祖がそこの山を買うことになったんだ。
で新しく道を刻んでから、クサマラの出る山道は使えなくした。
それからは、不埒なマラさんは出なくなったということだよ」
苦笑いしながら、彼はこの話を聞かせてくれた。
聞いていた私も苦笑いしていたと思う。
『クダン』
734 : 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2013/08/20(火) 19:17:00.53 ID:dTHcu64U0
知り合いの話。
彼女が住んでいる山村には、ある物の怪の話が伝わっているそうだ。
一人で山に入ると、足音がヒタヒタと後をついてくる。
振り向いても何の姿も見えないのだが、その場からすぐに逃げ出さないと、
地に押し倒されて、あんな事やこんな事をウリャウリャされてしまうのだと。
ただし、大人の女性限定。
この目に見えない物の怪はクダンと呼ばれていたそうで、
山に一人で入った女性、それも成熟した者にだけ悪さをしていたらしい。
襲われて運悪く孕んでしまった女性は、人面獣身の怪物を生むという。
こうして生まれた怪物もまたクダンと呼んでいたそうで、
面妖な外見ではあるが、人語を解し、性質も大人しく人に懐きやすかった。
加えて予言や失せ物捜しの神通力を持っていたので、村では重宝していたそうだ。
酷い凶作の年にはわざとクダンのいる山に、単独で女性を登らせたこともあったとか。
「酷い話だよねぇ、まったく。
死にはしないけど生贄だよ、まぁ大昔の与太話だけどね。
子供の頃にこの話を聞かされてからは、一生懸命に身を護る術を考えたものだわ」
そう言いながら、彼女は傍らの猟銃を撫でていた。
「……まさか、そのために狩猟免許を取ったの?」
そう問う私に、彼女は、
「さぁて?」と凄みのある笑みを浮かべた。
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