『昔馴染み』
∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part68∧∧
169 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2013/03/30(土) 20:45:57.42 ID:Aeqwcwa30
知り合いの話。
まだ幼い彼が実家に里帰りをしていた時のことだ。
父親と里山を散歩していると、川に小さな橋が掛かっている場所に出た。
街の川と違って魚の影が濃いことに興奮し、川面を一生懸命に覗き込んでいた。
そんな彼の様子を、父親はすぐ背後から見守っていた。
と、いきなり父親は「おーい!」と大声を上げ、上流の方へ手を振り始める。
目を向けると、誰かが川から上半身を出していて、やはりこちらへ手を振っていた。
同い年くらいの子供に見えたが、頭も腕も真っ黒で、表情などは見えない。
ただ赤い口だけが、パカリと開いているのが見てとれた。
彼が目を凝らそうとすると、すぐにそいつは水の中に姿を消したという。
「今の誰、何処の子なの?」そう尋ねると父親は、
「昔馴染みだ、気にするな」とだけ口にした。
実家へ帰ってから祖母にこの話をすると、
「あの子はよく河童と遊んでいたからねぇ」と懐かしそうに言われたそうだ。
『テーブルクロス』
∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part69∧∧
155 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2013/05/21(火) 20:30:52.87 ID:DKYMwAuh0
友人の話。
近場の森林公園に、家族でバーベキューに出掛けた。
炭火を熾すのは主人に、子供の世話は祖父母に任せ、彼女は食卓の準備をしていた。
折り畳みのテーブルを広げて足を立て、テーブルクロスを被せて食器を並べる。
水入れ代わりの水筒をテーブルに置いた時、クロスの端がスッと持ち上がった。
まるで誰かが指で摘んでいるかのように。
次の瞬間、
「ハイッ!」
と元気の良い声がして、クロスだけがスルッと抜き取られた。
上に載っている食器などはそのままで、微動だにせず倒れもしなかった。
まるで曲芸でも見せられたような気がした。
我に返ってクロスを拾い上げたが、何もおかしな所はない。
しばし考え、取り敢えずパチパチと拍手をしておいた。
拍手しながら森に向かって小声で頼み込む。
「お願いですから今の芸、食事中は披露しないで下さいね」
お願いが効いたのか、それ以降変わったことは起こらなかったという。
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