∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part63∧∧
『スクールバス』
646 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2012/07/30(月) 20:01:46.95 ID:83pSmRyW0
アメリカで聞いた話。
アメリカでは、子供の通学にはスクールバスが利用されているのだそうだ。
この話をしてくれた彼の家は山中の農場で、
バスストップは近場にあるものの、そこから乗降している子供は、彼を含めて僅かだったらしい。
その日の朝、バスを待っているのは彼一人だけだった。
他の子らは体調でも崩したのだろうか、誰も来ない。
落ち着かない気持ちで待っていると、道向こうからバスが来るのが見えた。
車が近づいてくるにつれ、違和感が彼を襲う。
この路線のバスは最近新調されていて、それが気に入っていたのだが――。
今こちらに向かってくるバスは、どう見てもボロボロに錆びているのだ。
というか、どう見てもスクラップ寸前の廃棄バスにしか見えない。
明らかにいつも利用している車両ではなかった。
やがてバスは彼の目の前で停車し、扉が開いた。
車の中から、物が腐ったような嫌な匂いが漂ってくる。
黒ずんだ座席には、子供は一人として乗っていない。
647 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2012/07/30(月) 20:05:06.90 ID:83pSmRyW0
どうしようもなく不安になって、乗り込まずに運転席の方へ廻ってみた。
運転席は無人だった。
悲鳴を押し殺して、後退りしながらゆっくりとバスから離れた。
やがてドアが閉まり、バスは遠くへ去って行ったという。
それからすぐに、いつものスクールバスがやって来たそうだ。
彼は自分の見たバスのことを大人に話したが、誰も真面目に取り合ってはくれなかった。
「しばらくの間、一人でバスを待つのが苦痛になったよ」と、
大人になった彼は苦笑しながらそう言っていた。
『竹藪』
737 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2012/08/03(金) 20:16:15.80 ID:9p1uHgAq0
友人の話。
彼は毎年、地元で開かれる夏祭りに参加しているのだが、その祭りでは鬼の役をすることが多いのだそうだ。
鬼というのは子供を怖がらせて泣かせる役割で、赤い服と天狗の面を付けて、太い竹の棍棒を持っている。
竹は先を細かく割り、地面を叩いて子供を威嚇するのに使うが、
ある程度の太さがないと良い音も出ないし、壊れてしまうのも早いという。
去年、その竹がついに壊れてしまったということで、
今年は新しく切り出して作り直そうという話になり、祭り仲間達に良い竹がある場所を聞いてみた。
「いつも通り、○○水源地の竹で良いんじゃないか?」
「あそこは今どんどん伐採されてるから、太い竹は殆どないよ」
「□□さん宅の竹林は?」
「駄目。工事でこの前重機入れたから、かなり削られてるし」
「此処だけの話、演習場の奥にある竹が、本当に立派で良いんだけどなぁ」
「あそこは止めとけ、止めてくれ。撃たれるから」
ガヤガヤと半分楽しみながら打合せをしていると、ふと思い出した。
「××山にさ、先が行き止まりになってる細い山道があるじゃない。
その一番奥のドン詰まりに、目立たないけど竹藪があったよ。
あそこの竹はどうかな? 確か結構太かったと思う」
738 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2012/08/03(金) 20:19:35.10 ID:9p1uHgAq0
最近仕事した現場近くの竹を思い浮かべながら、そう提案してみる。
しかし、昔のことに詳しい幾人かが、渋い顔をして否定した。
「あそこのは駄目だ。祟るから」
口々にそんなことを言う。
聞けば、そこの竹を切り倒すと、切った者には何もないが、その家族に散々悪いことが起こっていたのだそうだ。
「死ぬってことはなかったらしいけど、家族に障りがあるのは厭だろ」
それはそうだ。
彼自身はあまりそういうことは信じていないみたいだが、それでもわざわざ自分から地雷を踏みに行くような性格でもない。
結局、伝を頼って別の竹藪を紹介してもらい、そこの竹を使用したそうだ。
次の記事:
『毎日6時間くらい残業』
前の記事:
『業務日報』