∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part63∧∧
『ハーイ』
429 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2012/07/21(土) 20:11:16.84 ID:gMq9PSoY0
アメリカで聞いた話。
山深い森林で鹿狩りをしていると、何処からともなく甲高い声が聞こえた。
「ハーイ」と人を呼ぶ声で、女性のもののように思えた。
同行していた仲間が、「出会しちまった」と顔を顰める。
声の主を知っているのかと聞くと、次のように言われたそうだ。
「これは、ここいらのインディアンから、『呼ぶ女』って呼ばれているモノの声だ。
もっとも女なのは首から上だけで、身体は鹿とか馬とかの姿をしているらしいがな。
インディアンにはインディアンの言葉で、白人には白人の言葉で呼びかけるらしい。
厭なことに、こいつは実は人を呼んでるんじゃなくて、人に狙われている動物に 注意を呼びかけてるって言われてるんだ。
だから、この女の声が聞こえたら、もう獲物は捕れないってよ」
その言葉通り、その日は結局、鹿を目にすることさえ出来なかった。
夕方になり、彼らが帰途についた時も、声はまだ聞こえていたそうだ。
『夢の蛇』
576 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2012/07/27(金) 19:53:33.92 ID:alRUP7m90
知り合いの話。
アメリカでインディアンの居留地にステイしていた時、腹痛に襲われたという。
とんでもない激痛で、身体を動かすことも適わなくなり、危篤状態にまでなったのだが、
現地の呪医が処方してくれた薬が劇的に効き、無事一命を取り留めたそうだ。
薬が効いている間は体中の感覚がなくなり、同時に痛みも感じなくなったという。
しかし奇妙な事に、寝ている自分を真上から見下ろしたり、建物の屋根をすり抜けてから空を飛んだりした記憶がある。
いやにくっきり、はっきりと。
呪医が言うには、この薬は体と心を切り離してから、患部を強烈に治す働きがあるのだと。
要するに、副作用として幽体離脱してしまう薬だったらしい。
回復後に、お礼の日本酒を持参して呪医を訪ね、薬の話をもっと詳しく聞いてみた。
それによると、とある森に棲まう、角の生えた大蛇から採取した薬だという。
「夢の蛇」と呼ばれるこの蛇は、呪医自身が魔法の歌を唄って森から呼ぶというのだが、
大層音楽の好みにうるさいようで、歌が気に入らないと姿を現さないのそうだ。
因みに上手く呼べる確率は、これまでの経験では十回に一回程度らしい。
歌が気に入ると森の中から出てきて、角を大人しく削らせてくれるのだと。
しかし歌が途切れると、蛇はこちらに興味をなくしたような様子になり、すぐさま姿を隠してしまうので、
削る間は必死で歌い続けなければならないそうだ。
「お前に処方した薬は、その角の粉末を使っているのだ」と言われた。
「今はもう滅多に入手できないから、ありがたく蛇と私に感謝しなさい」とも。
彼も負けずに、「この酒も滅多に入手できない、高価なものなんですよ」と言い包め、
皆で仲良く酒盛りを楽しんだのだという。
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