∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part63∧∧
『ヤカン』
271 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2012/07/17(火) 17:12:37.99 ID:3ET3dz9+0
知り合いの話。
夕暮れの山道を下山していると、背後より何かが大きな音を立てて迫ってきた。
振り向いて見ると、ガラガラと騒がしく、薬罐が転がってくる。
「何でヤカンがこんな山中に?」
疑問に思っていると、薬罐は狙ったかのように、彼の足下でピタッと止まった。
じっと見ていると、どうしてか、目の前のそれを思いっ切り蹴飛ばしたくなった。
足を振り上げて、ハッと我に返る。
「いやいや蹴っちゃいかんだろ、落とした人が追って来ているかもしれんし」
頭を振り振り、拾い上げようと足下に手を伸ばす。
次の瞬間、薬罐は男の生首に変化していた。
口から赤い筋が垂れていて、恨めしそうに彼を睨んでいる。
「惜しかった」
首はそれだけを口にしてから、すぅっと消えてしまった。
『一人だけ』
272 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2012/07/17(火) 17:16:11.49 ID:3ET3dz9+0
知り合いの話。
仲間三人で、雪山に篭もっていた時のこと。
テントを畳んでいると、誰かが耳元で囁いてきた。
「・・・一人だけ・・・帰れるのは一人だけ・・・」
周りには仲間以外誰もいない。気のせいだと思い、忘れることにした。
その夜から天候が悪化し、吹雪に閉じこめられてしまう。
吹雪は一向に止まず、食糧も尽きた。
しかし皆、何とか生き長らえ、全員無事で下山したのだという。
その後一年の間に、彼以外の二人は、不慮の事故で死んでしまった。
「事故だって、偶然だってわかってはいるけどね。
あの幻聴が気になって仕方ないんだよ」
あれ以来、彼はスッパリと山を止めてしまったそうだ。
『ビーバー』
273 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2012/07/17(火) 17:20:16.60 ID:3ET3dz9+0
アメリカで聞いた話。
静かな湖畔の森を歩いていると、どこからともなく美しい歌声が聞こえてきた。
「一体誰がこんなに美しい歌声を出しているんだろう?」
そう思い、湖の周りを探してみた。
繁みを掻き分けていくと、大きなビーバーが水辺に見えた。
歌声に併せるように、気持ち良さ気に身体を揺らしている。
まるでビーバーが歌っているかのような気がして、驚いて小声を出してしまった。
途端、歌声は止まり、ビーバーが振り向いた。
ビーバーはしばらくこちらと見つめ合ったが、やがて苦笑としか思えない、
やけに人間くさい表情を浮かべ、水の中へ姿を消したという。
もう何処からも、あの美しい歌は聞こえなかった。
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