∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part63∧∧
『望遠鏡』
140 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2012/07/13(金) 20:11:46.08 ID:XIAWe1r40
団体仲間の話。
休日に友人と二人、近場の山へ出掛けた。
子供や老人でも登れる小さな山だが、それでも頂上に着く頃には結構疲れた。
頂上の一方は展望台になっており、望遠鏡が備え付けられている。
天気も良かったので、眺望を楽しもうと覗き込んでみた。
口を一杯に開けた女の顔が見えた。
傷なのか血なのか、髪の先から顎に掛けて、赤い筋が何本も走っている。
ビックリして尻餅を付くと、友人が「どうした?」と助け起こしてくれた。
今見たものを説明すると、友人は恐る恐る望遠鏡の前にしゃがみ込んだ。
「変なものは何も見えないぞ」
促されて再度見てみたが、確かに普通に良い眺めが広がるばかり。
もう何処にも、あの女の顔は見えなかった。
何だったんだと首を傾げながら展望台を後にする。
その時、背後から「ひゃぁ!?」と叫び声が聞こえた。
振り向くとリュック姿の小母さんが、ペッタリとへたり込んでいる。
「・・・多分、僕と同じものを見ちゃったんだろうなぁ」
そんなことを考えながら、下山したのだという。
141 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2012/07/13(金) 20:15:33.09 ID:XIAWe1r40
知り合いの話。
彼は毎日、山中を通る単線列車を利用して通勤している。
帰りがひどく遅くなった、ある夜のこと。
時間が時間だけあって、車両の中には彼一人しか居なかった。
座席に腰掛けうつらうつらしていると、いきなり背後の車窓が叩かれた。
驚いて振り向くと、窓の向こうに、髪を振り乱した女が見えた。
両手を窓ガラスに押し当て、彼のことを食い入るように睨んでいる。
一瞬の後、女の姿は掻き消すように見えなくなった。
窓の向こうは、もう漆黒の闇しかない。
もうそれ以上は転た寝する気にもなれず、自分の降りる駅が来るまでどうにも落ち着かなかったのだという。
『黒いボールのような物』
142 :雷鳥一号◆zE.wmw4nYQ:2012/07/13(金) 20:19:33.49 ID:XIAWe1r40
元同僚の話。
彼は山奥の工業団地で、工員として働いている。
務めている工場の敷地は広大で、幾つもの渡り廊下で繋がっている。
その中の一つに、従業員達が気味悪がっている廊下があるらしい。
そこを歩いていると、すぐ横を黒いボールのような物が、庇から落ちる。
そして地面で一度弾んでから「痛っ!」と叫んで、煙のように消えるのだという。
出会した者は皆、目を逸らし直視するようなことはしない。
だから今でもそれは「黒いボールのような物」としか呼ばれていないのだそうだ。
次の記事:
『親父から電話がかかってきた』
前の記事:
『春休みにキャンプ』