∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part62∧∧
『女性の後ろ姿』
924 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/07/03(火) 18:40:07.23 ID:yhSyC/420
友人の話。
山深い川で魚を釣っていると、左手の方に人影が見えた。
目をやれば、ワンピース姿で長い黒髪の女性が、川の中程に立っていた。
腿まで水に浸かり、こちらに背を向けているので、表情は見えない。
いつからそこに居るのか、全く気が付かなかったという。
「妙だな、あそこは流れが強くて、とてもあんな細い女性が立っていられるような場所じゃないのに・・・」
ピクリとも動かない後ろ姿を見ているうちに、段々と薄気味悪くなってきた。
納竿して帰ることにしたのだが、最後に振り返った時も、その女性はずっと同じ姿勢のまま、急流の中で立っていた。
釣り仲間に聞いたところ、昔からその川では、女性の後ろ姿がしばしば目撃されていたらしい。当時は着物姿だったという。
気味が悪いので、これまで誰かが声を掛けたという話はないそうだ。
また、その顔を拝んだ者もいないという。
「ま、声を掛けた人が、無事に帰ってきてないだけかもしれないけどね」
しれっとした顔で最後に彼はそう付け加えた。
『川面で音がする』
925 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2012/07/03(火) 18:43:50.42 ID:yhSyC/420
友人の話。
夜に渓流で釣りをしていた時のこと。
居合わせた数人で談笑しながら興じていると、近くの川面で音がする。
漁師が投網を打っているような音だ。
音が聞こえ出すと同時に、周りの釣り人達が皆、撤収支度を始めた。
不思議に思って問い掛けると、こんなことを言われた。
「川天狗さんが網を打ち始めたからね。
この音に出会ってしまうと、もうその夜は絶対に釣れないんだよ。
僕らは帰るけど、君はどうする?」
取りあえず粘ってみることにし、河原で一人、朝まで竿を振ってみた。
釣果は予言された通り、まったくの坊主であったという。
『山中の野池』
926 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2012/07/03(火) 18:47:10.16 ID:yhSyC/420
友人の話。
山中の野池へ、仲間と二人でバス釣りに出かけた。
ボートを出して池の中ほどで楽しんでいると、視界の外れで動く影がある。
子供が溺れていた。必死の形相で手を振っている。
「おい、アレ!」
連れもそれに気がつき、慌ててボートをそちらに回す。
エンジン全開で水上を走り、子供まであと少しという所で―。
ドン!という衝撃が船底を襲い、二人してボートの外に投げ出された。
ボートは浅い砂洲に乗り上げていた。
一瞬溺れるかと焦ったが、足が水底に着くことを確認して落ち着く。
何とか立ち上がってみると、水は脛下までの深さしかなかった。
「大丈夫か?」という連れの声で我に返り、子供の方に目を向けた。
つい先までそこで足掻いていた筈の姿がどこにもない。
水面は凪いでいて、浅い底が透けて見えていた。
冷静になってみると、色々とおかしな点に気が付き、連れに確認する。
「そう言えばさ、お前はあの子の悲鳴っていうか声、聞こえた?」
「あ・・・あぁ、誰の声も聞こえてなかった」
「今思えば、水がバシャバシャ跳ねる音も、全然聞いてないんだよね」
「「・・・今見たのはまともな子じゃないぞ・・・」」
必死でボートを深瀬に押しやり、そこから逃げ出した。
岸に這い上ると、その日はそこで終わることにする。
その後しばらく、その野池には近よらなかったそうだ。
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