∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part56∧∧
『金庫』
369 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/07/27(水) 19:49:29.70 ID:U9F3WRR/0
昔馴染みの話。
山間の実家で暮らしていた頃、彼はよく川で泳いでいたという。
ある夏の日、友人と連れ立って、普段は誰も行かない淵の方へ泳ぎに行った。
楽しく泳ぎ遊んでいる内、友人の一人が奇妙な物を見つけた。
淵の深みに、一抱えもある木箱が沈められていた。
一体何の木で作られているのか非常に重い代物で、皆で苦労しながら引き上げてみた。
鉤を引っかけ止めるだけの単純な蓋。鍵は掛かっていなかった。
開けてみると、中には胡瓜がぎっしりと詰められていた。
瑞々しくてよく冷えている。
誰かが「もしかするとこれは河童のものじゃないか」と言い出した。
「河童の金庫っていうところか」
「どうせならもっと良い物を入れておいてほしいよな」
そう軽口を叩き合いながら蓋を閉め、元の場所へ沈め直したという。
「何故元に戻したかって? 盗っちゃ河童に悪いだろ」
何でもないような調子で彼はそう言った。
『夏の空』
370 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/07/27(水) 19:50:33.86 ID:U9F3WRR/0
知り合いの話。
子供を連れて、近くの山へ蝉取りに出掛けた。
夢中になって虫取り網を振り回している子を見守りながら、腰を落として一息入れる。
抜けるような夏の空を見上げていると、何かが上空をヒラヒラと漂っているのが見えた。
白くて細長い布が宙を舞っている。
「一反木綿みたいだな」と考えながら見ていると、いきなり布はすぐ頭上まで降りてきた。
そして彼の真上で少し滞空すると、また空の高みへと飛び上がる。
そのまま山の頂上の方へ飛んで行ったという。
「まるで生き物のように思えたよ、そんなこと有り得ないんだけどな。
だってすぐ近くで見られたからわかったんだけど、アレ、間違いなく越中褌だったんだ。
しかし、あんな物があんな飛び方出来るものなのかね?
あの日、風はまったくと言っていいほど吹いていなかったんだけどな」
そう言って彼は首を傾げていた。
『水の上』
371 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/07/27(水) 19:51:46.02 ID:U9F3WRR/0
友人の話。
大学生の折、サークル仲間と渓流でキャンプをしたのだという。
季節は夏で丁度良い感じの砂地もあったので、西瓜割りをしようという流れになった。
ジャンケンで負けた後輩に目隠しをさせ、その場で三度身体を回してから挑んでもらう。
見当違いの方に向かうのを皆で笑いながら見守った。
「おいおい、そっちに行くと川に嵌るぞ」
誰かがした忠告も空しく、目の見えない後輩は川面に向かって足を踏み出した。
そのまま、つつっと何歩か水の上を歩いて渡る。
皆が呆気にとられていると、水の上に立っている後輩は大声を出した。
「あれっ何か足元の感触がおかしいんだけど!?」
次の瞬間、後輩は水飛沫を上げて水中に没した。
幸い浅瀬だったので服を濡らす程度で済んだという。
「お前、水の上を歩いていたぞ」
そう言われた後輩は目をパチクリとさせていたらしい。
その後、散々「もう一回!」と川に向かって歩かされたが、彼が水の上を歩くことは二度と無かったそうだ。
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