∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part56∧∧
『村外れの山裾』
34 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/07/15(金) 23:02:28.20 ID:+ZNP9Bvc0
知り合いの話。
夏祭りが終わった夜、村外れの山裾を一人歩いていた。
行く手の方角から、ズルズルと何かが擦れるような音が聞こえてくる。
やがて月明かりの下、音の主が眼に入ってきた。
道を横切って塞いでいる、黒光りする長い生き物。
蛇のように見えた。太さは彼が一抱えするほどもあったらしい。
尾の先の方は繁みの中に潜っていて、一体どれほどの体長なのかもわからない。
それが延々と山手の方に向かって這い進んでいる。
山肌を見やると、途中に穴が開いているようで、蛇はそこに這い込んでいく。
「この斜面、こんな太い蛇が潜れる穴なんてあったっけ?」
凝視していると穴の縁が見て取れるようになってきた。
小さく古びていたが、間違いなく鳥居だった。
「あ、これ、主様かも知れん」
確かここの主は大蛇だったと年寄りに聞いたことがある。
行き逢えば祟ることもあるという話だったので、慌てて踵を返すと別の道を辿って家に帰ることにした。
翌日、日が高くなってからもう一度そこに訪れ、例の鳥居を探ってみた。
鳥居の周りは何処にも穴など無く、とてもあの蛇が潜り込めるような隙間も無い。
「鳥居を抜けて通るってことは、神様の類なのかなぁ。
でもあまり厳かな感じは受けなかったなぁ。
何にせよ、祟られなくて良かったよ」
そう苦笑しながら、彼はこの話をしてくれた。
『山奥で光る』
35 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/07/15(金) 23:03:27.78 ID:+ZNP9Bvc0
昔馴染みの話。
彼の母君は幼い頃、実家のある山奥で光る倒木を見たのだという。
何だろうと近よってみると、それは倒木ではなく大きな白い蛇だった。
大人がやっと跨げるほどの胴太で、全長はどれ位あるのか見当も付かない。
蛇体の端は、両方とも茂みの中へ消えている。
何故か怖いとは思えなかった。
しばらくズルズルと這う、白く明滅する蛇腹を眺めていたが、
それ以上何の変化がある訳でもなく、そのうち飽きて帰宅したそうだ。
困ったのがその後で、母君は口がきけなくなっていたという。
何か話そうとすると急に喉に物がつかえたようになり、言葉が出なくなるのだ。
家族らが焦っていると、様子を見ていた祖母が言った。
「主様を見たんだね、しばらくは口が使えないよ。
我慢していい子にしていれば、また元に戻るから」
それから二週間ほどして、やっと普通に喋れるように回復したという。
「あの時は本当に焦ったわ。
でも神様クラスの存在と行き逢って、障りがそれだけで済んだっていうのは、凄く有り難いことだったのかもね」
おっとりとした顔で、母君はそう仰った。
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