∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part55∧∧
『山中のお寺』
635 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/06/29(水) 20:04:53.99 ID:gPCyco3a0
知り合いの話。
彼は子供の頃、山中のお寺に何度かお泊まりしたことがあるらしい。
地元の子供会の行事だったとか。
小学校に上がる前の年、やはりその寺に宿泊したという。
真夜中、尿意で目が覚めた。
一人トイレに行ったのだが、用を足しているとゴーンという鐘の音が聞こえてくる。
こんな時間に誰が鐘を突いているんだろうと不思議に思い、見に行ってみた。
縁側から鐘突堂を見やると、白い着物を着た女性が鐘を突いている。
近所に住んでいる、顔見知りの小母さんだった。
怒ると怖い人だったので、近よらずに布団に戻ることにした。
「大きくなってからこの記憶を思い出したんだけど、別のことも思い出したんだ。
俺らが寺に泊まったその日、この小母さんもう死んでたって。
確か前日に葬儀があったんだ。うん、正にあのお寺で」
今でも時折、寺の鐘の音が小さく聞こえる夜があるのだと彼は言う。
「そんな時、ふっとあの小母さんが頭をよぎるんだ。
ひょっとして鐘を突いているのは、その日死んだ人なんじゃないかって。
死んだ人はあそこの山の上から浄土に行くって、昔は言われてたみたいだし」
『山奥の温泉旅館』
636 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/06/29(水) 20:07:05.76 ID:gPCyco3a0
友人の話。
山奥の温泉旅館に泊まった時のことだ。
真夜中、尿意で目が覚めたのでトイレに行くことにした。
用を済ませて廊下を歩いていると、『関係者以外立ち入らないで下さい』と書かれた札のある一角を通り過ぎた。
奥の方で明かりが灯っており、そちらから食欲をそそる良い匂いが漂ってくる。
「厨房かな?」
半分寝惚けた頭をその通路に突っ込んでいると、後から肩を叩かれた。
「駄目ですよ、そちらは従業員専用です」
柔らかい声でそう注意される。
「あ、こりゃどうもすいません!」と慌てて振り向くと、女性が一人立っていた。
服装は間違いなくその旅館の仲居さんのものだったが、その首から上、こちらを見つめるその顔だけが、狐だった。
唖然としている彼の前で仲居さんは頭を下げた。
金色の毛皮の後頭部が見えた。
そしてパッと掻き消すように消えてしまったという。
翌朝、部屋を訪れた女将にこの話をしてみた。
笑われるかと思ったが、まだ若い女将さんはニッコリと笑って、
「レアですよ、運が良かったですね」とだけ答えてくれたそうだ。
『山中の寮』
637 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/06/29(水) 20:08:20.27 ID:gPCyco3a0
友人の話。
新入社員研修で、山中の寮へ泊まった時のこと。
寮といっても、寂れたホテルを改修した建物で、山の奥過ぎて脱走も暇潰しも出来ないような場所だったらしい。
夜中に尿意で目が覚め、一人でトイレに向かった。
真っ暗なホールに出たところで、明かりを点けようと照明のスイッチを探す。
記憶を頼りに壁に手を伸ばすと、何か暖かくて柔らかい物に指先が触れた。
次の瞬間、ギュッと握られた。
暗闇の中で誰かに握手された形となる。
驚いて硬直していると、いきなり握られた手がぐいぐいと引っ張られ始めた。
何処かへ連れて行こうとでもするように。
悲鳴を上げて振りほどき、必死でスイッチを探り当て照明を点けた。
ホールには誰の姿も見えなかったという。
638 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/06/29(水) 20:17:02.19 ID:gPCyco3a0
こんばんは、雷鳥です。
私の住んでいる地方ですが今日は本当に暑かったです!
熱中症になるかとマジで思いましたよ。
去年、一度ブッ倒れてダウンした経験がありますし、気を付けました。
皆さんも御身体には十分に気を配ってくださいまし。
本日の三話ですが、聞かせてくれた三人ともあまり怖がっていなかったのが印象的でした。
尤も最後の友人に、
「そのまま連れて行かれるに任せてたら、一体どこに連れて行かれたんだろうね」
等と言ってみたところ、急に怖くなったと文句を言われてしまいましたが。
『まぁ何だ、夜中の尿意には気を付けろ!』っつーことです。
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