∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part55∧∧
294 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/06/18(土) 20:05:45.35 ID:5X8VrCEz0
山仲間の話。
そろそろ日が暮れようかという頃合。
一人辿っていた林道で場違いな物を見つけた。
道の真ん中に落ちていた物。
それは古い型の携帯電話だった。
近よった途端、いきなりその携帯が音を上げて震えだした。
ミッキーマウスのテーマ。
どうやら着信があったらしい。
てっきり電池が切れていたと思った携帯が鳴ったのにも驚いたが、それ以上にこの山奥で受信出来ていることに驚く。
どこの電波拾ってるんだろう?
拾い上げてみたが、発信者名は文字化けを起こしていて読めない。
どうしようか迷っていると、電子音がして勝手に通話状態になった。
えっ、俺何もしてないぞ?
295 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/06/18(土) 20:06:54.78 ID:5X8VrCEz0
『・・・』
声は聞こえないが、何か息遣いのような音が聞こえてくる。
仕方ないと覚悟を決めて、「もしもし?」と話し掛けた。
『・・・ぞ』
「もしもし? よく聞こえませんが。この携帯は落ちていた物で・・・」
掠れた声相手に事情を説明していると、突然鮮明な大声がスピーカーから流れ出た。
『見つけたぞ』
理由もなく、背筋がゾッと寒くなる。
携帯を投げ棄てるや否や、後ろの山に気配が湧いた。
何か正体がわからないモノが、嫌な気を発しながら駆け下りてくる、そんな気配。
大きくて重たいモノが、自分目指して真っ直ぐに向かってくる、そんな気配。
理由はわからないが、何故かそう確信してしまった。
暗くて足元も定かでなかったが、それでも必死に林道を駆け下りた。
追ってくるモノが何かはわからない、しかしアレに捕まっては絶対に駄目だ。
何度も転げながら、いつしか泣き出していた。
距離を詰められて来ているのがわかった。
このままでは追いつかれる!
296 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/06/18(土) 20:07:52.98 ID:5X8VrCEz0
いきなり目の前の林が切れて、舗装道路に出た。
新しく付けられた道まで駆け下りてきたのだ。
運良く、丁度通り掛かった軽トラックがあった。
天の助けに思えた。
身体を張って何とか車を止め、乗せてもらうことに成功する。
彼を乗せた車がスピードを上げるにつれ、後ろの気配は鎮まっていった。
やっと安堵の溜息がつけた彼に、様子を窺っていた運転席の老人が話し掛ける。
「お前さん、一体どうなすった?
まるで鬼にでも追いかけられたような顔をしてるよ」
説明しようとして、一瞬言葉に詰まる。
こんなことを話して、果たして信用してくれるだろうか?
少し迷ってから、結局洗いざらい話すことにした。
老人は不思議そうな顔をしたが、それでもこう教えてくれた。
「それが本当ならば、しばらくこの山に登らん方がええ。
奥に何がおるのかわからんが、そのモノとお前さんには今、縁が出来とる。
言葉を交わしちまったことで繋げられたんだろう。
目を付けられている時は、危ない行動は控えるモンだ」
そう言ってから、親切なことに最寄りの駅まで送ってくれたという。
それ以来、彼は老人の忠告を守り、その山を避けているそうだ。
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