∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part55∧∧
『焚き火』
229 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/06/16(木) 19:12:19.97 ID:su66lpZA0
知り合いの話。
仕事で仲間と二人、山に入っていた夜のことだ。
焚き火を挟んで座り談笑していたのだが、不意に相手が黙り込んだ。
「おい、どうした?」
尋ねてみても、連れは上の方を見上げたまま返事をしない。
何だよ感じ悪いなぁと思いながら、煙草に火を点けて深く吸い込んだ。
自分も顔を上げ、紫煙を勢いよく吹き上げる。
煙の行方をぼんやり追っていると、頭上の梢の中で小さく咳き込む声がした。
「ケホン、ケホン!」
続いてガサガサと葉っぱが揺れる。
何かが木々の上を移動して、ここから去って行ったらしい。
230 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/06/16(木) 19:13:23.53 ID:su66lpZA0
驚いて腰を浮かす横で、連れが大きく息を吐き、緊張を緩めるのがわかった。
そして言うには、
「いや、ふと上を見るとな、誰かと目があったんだ。
葉の向こう側、暗闇の中に二つの黄色い目玉だけが浮かんでた。
ビビって動けなくなっていたんだが、お前が煙草を吹き付けたら、咳き込んでどっか行っちまった。助かったよ」
「後にも先にも、喫煙を感謝されたのはあの時だけだな」
彼はそう言って頭を掻いていた。
『家族の描いた絵』
232 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/06/16(木) 19:17:43.89 ID:su66lpZA0
友人の話。
アメリカへ留学していた時のことだ。
ホストファミリーは皆揃って絵画が好きだったそうで、家族の描いた絵が山のように屋根裏部屋に収められていたらしい。
彼も好きな口なので、よくそれを眺めさせてもらっていた。
そんなある日、これまでにない変わった一枚を見つけた。
コンテのみで描かれたモノトーンの絵だ。
画の中心には全壊した丸太小屋がある。
屋根はすべて剥がされて、壁も僅かばかりに残っているだけ。
周りに残骸が散らかっており、その間に人が二人ばかり倒れている。
233 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/06/16(木) 19:18:56.76 ID:su66lpZA0
そして、その壊れた小屋の横に腹這いになっている、黒い大きな獣が一匹。
デザインとしては犬か狼に見えた。
頭から尾の先まで、優に小屋の倍はあった。
家人にその絵のことを尋ねると、
「詳しいことはわからないが、開拓時代に描かれた絵を、数代前の家長が模写したものらしいよ。よほど印象的だったんだろう。
元絵?いやどこで見たのかとかは伝わってないな」
との答えがあった。
今でもふと、あの絵のことを思い出すことがあるのだという。
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