∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part54∧∧
『単独登山』
466 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/05/02(月) 19:31:18.86 ID:e0/8ql8f0
友人の話。
単独登山を楽しんでいた夏の夜。
晩飯を食べ終え、焚き火の明かりで本を読んでいると、周囲の繁みがガサガサと揺れ始めた。
何かが彼の周りをゆっくりと回っているようだ。
燃え差しを手にし身構えていると、いきなり闇の中に大声が響き渡る。
火が点いたように泣いている赤子の声だった。
慌てて動きのあった繁みに踏み込んでみたが、何も動く姿は見つからない。
正体の見えない泣き声を追い回して二、三分も経ったろうか。
始まった時と同様、声は唐突にプツリと消えた。
その後はもう山を下りるまで、泣き声が聞こえることはなかったという。
『ねぇ』
467 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/05/02(月) 19:32:02.96 ID:e0/8ql8f0
友人の話。
一人で地元の山に入っていた時のこと。
背後から誰かに「ねぇ」と声を掛けられた。
「女性? 何でこんな山奥に?」不思議に思いながら振り返ってみる。
そこでふっつりと意識が途切れたらしい。
我に返った時には、全然知らない大きな街の中で佇んでいたという。
腕時計を確認すると、丸一日が経過していた。
山仲間にこの話をしたところ、山に棲む何者かに追い払われたんじゃないかと言われたそうだ。
彼は今でも時々その山に登っているが、あの場所より奥には足を踏み入れないように注意している。
『ふふ~ん』
468 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/05/02(月) 19:33:05.06 ID:e0/8ql8f0
先輩の話。
夜の山道を歩いていると、先方の暗闇から男性の歌声が聞こえてきた。
誰かが良い気分で鼻歌を歌っているらしい。ほろ酔いな雰囲気が感じられた。
演歌だ。知らない部分の歌詞を「ふふ~ん♪」で誤魔化しているのが微笑ましい。
やがてすれ違う。
闇の中、歌声だけが、先輩の横を通り過ぎていった。
歌い手の姿はどこにも見えない。
演歌のサビはエンドレス、コブシを効かせながら山奥へと消えていった。
「でもよ、よりによって『兄弟船』を歌ってたんだぜ。
山で歌うのに船は無いだろうが、マッタク」
先輩、貴方ズレてます。
そう思いはしたが、決して口には出さない私だった。
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