∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part54∧∧
『切れない木』
401 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/04/30(土) 19:48:53.26 ID:/mYGPkSR0
知り合いの話。
地元の峠道を整備しようとした際、どうしても切れなかった木があったという。
切ろうとした作業員が怪我をしたり、工具や機械が突然動かなくなったりして、
結局皆が近よるのを嫌がるようになり、放っておかれることになったのだと。
他は真っ直ぐに敷き直された道が、そこだけ木を回り込むように変なカーブを描いているのは、そういった理由かららしい。
知り合いはその工事現場へ資材を運びに行った折りに、その木を見たそうだ。
「そしたらな、ぼんやりやけど見えたんや。
木の上にでっかい猿みたいな、だけど透き通った何かがおった」
慌てて見えない風を装い、資材を手早く下ろして現場を後にする。
「あんなモンが居てはるんじゃ、あの木はちょっと切れないやろうなぁ」
帰りの運転中、しみじみとそう思ったそうだ。
『毛玉』
402 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/04/30(土) 19:50:10.31 ID:/mYGPkSR0
同僚の話。
山奥の湯治場へ泊まりに行った時のこと。
シーズン外れだったこともあり、外湯の広い湯船が貸し切り状態だったそうだ。
湯上がりの良い気分で渡り廊下を歩いていると、庭から這い上がってきた物がある。
真っ黒い、モコモコとした毛の塊。
仔犬ほどの大きさで、手足は見えないがワサワサ蠢いている。
履いていたスリッパを手にし、恐る恐る突いてみた。
クタッと中身が抜けたかのように、毛塊は平べったくなった。
それ以上動くこともない。
スリッパで毛を掻き分けてみたところ、中には何も入っていなかった。
まるで理髪店の床上みたいに、黒い毛だけが散乱している。
放っておくことにし、部屋へ戻った。
その湯治場を発つ前に、計三回その毛玉を目撃した。
すべて無視したのだという。
『エンコウ』
403 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/04/30(土) 19:51:32.72 ID:/mYGPkSR0
昔馴染みの話。
ある朝、里山を歩いていると、ひどい悪臭に襲われた。
生臭い匂いが、眼下の川原から立ち上ってくる。
何か死んでいるのかと下りてみたところ、砂地の上に点々とした窪みが続いていた。
パッと見、人が歩いた跡のように見えた。
青藻のような物が所々にこびり付いているようで、それがとてつもなく臭い。
窪みは川が淵になった場所で途切れていた。
散歩していた近所の小父さんが、彼と同じように川原へ下りてきた。
「おや、久しぶりにエンコウが出たのか」
小父さんによると、これはエンコウと呼ばれる生き物の足跡だという。
いわゆる河童みたいなモノなのだと。
「あいつら日の高い内は出てこないから。
だからしばらくの間、暗くなってからは、この辺をうろつかない方がいいぞ」
それだけ言うと、小父さんは散歩に戻っていった。
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