∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part53∧∧
『山寺に合宿』
316 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/03/29(火) 19:28:58.95 ID:ZHWs4vNd0
登山仲間の話。
高校生の時分、部活で山寺に合宿した。
その日は彼女の班が夕食当番で、同級生三人が並んで食器や鍋を洗っていた。
いきなり、一番右端の者が「うひゃっ」と奇声を上げる。
続いて真中の娘も「ひっ」と首を竦めて皿を落とす。
どうしたの、と尋ねようとした途端。
ペタリと、生暖かい濡れた物が首筋に貼り付いた。
似たような悲鳴を上げて背後を振り向くと、そこに紫色の口があった。
何もない空間に、だらしなく半開きの口だけが浮いていたのだ。
唇を割って、青黒い舌が揺れながら垂れている。
三人揃って、皆の元へ逃げ戻ったという。
居合わせた者を引き連れて洗い場へ返したが、既にそこには何も見えなかった。
顧問の先生が言うには、この山には昔から青舌と呼ばれる何かがいるのだと。
「以前にも先輩や卒業生が、何人か出会っているよ。
ベロリと舐めるだけで他に害はないみたいだから、心配するな」
「舐められるってこと自体が、もう堪らなく嫌なんじゃないの。
先生その辺わかってないよねぇ」
そう彼女たちは愚痴をこぼしていた。
『山靴』
317 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/03/29(火) 19:31:04.42 ID:ZHWs4vNd0
同級生の話。
山奥でキャンプしていたある朝、外に出ようと山靴を手にして驚いた。
内部がグッショリと濡れていたのだ。
雨も降っていないし、近くに水が湧いている様子もない。
取りあえず、出来るだけ水を拭き取ってから、そこを発つことにする。
しかしそれから山を下りるまでの間、靴は水を噴いているかのように濡れ続けた。
「ミズチに魅入られたな。この奥の沢に棲んでいるらしいから。
あれに憑かれている間は身に付けている物が何か一つ、必ず水浸しになるんだ。
こっから下りてもしばらくは泳いだりしなさんなよ。
まず溺れてしまうぞ」
麓の無人駅で出会った地の人が、そう忠告してくれたそうだ。
『変わった石』
318 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/03/29(火) 19:32:55.46 ID:ZHWs4vNd0
知り合いの話。
彼の地元の寺社跡に、変わった石があるのだという。
子供ほどの大きさがあるそれに抱き付いていると、病が治るのだと。
言い伝えによれば、昔その山には鬼がいて、人を獲っては喰らっていたと言われる。
何故かこの鬼が襲うのは病人ばかりで、特にその患部を好んで食していたらしい。
やがて鬼は死んだ。
徳の高い御坊さんに折伏されたとも、只の自然死だったともされ、詳細ははっきりしない。
鬼の骸は石へと転じ、その山にある寺に置かれた。
これがその石の由来で、御抱え石などと呼ばれている。
「鬼の奴、石になってもまだ喰い足りないのかな。
いや俺は抱き付いたことはないよ。
健康な者が抱き付いたら、どこ喰われるかわかったモンじゃないだろ」
酒を飲みながら、彼はそんな話を聞かせてくれた。
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