∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part52∧∧
『死体』
811 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/02/28(月) 22:15:48.50 ID:a/oDp9D00
山番の話。
里山の奥を歩いていると、横手の木立中に嫌な物を見つけてしまった。
首吊り死体だ。結構な日数が経っているのか、すっかり蒼黒くなっている。
饐えた臭いが鼻を突いた。
その時、直ぐ横を煌めく群青が通り抜けた。
蝶だ。大きい。
昆虫の名前には割と通じていたが、その蝶の名前は皆目見当も付かなかった。
蝶は次から次へと現れて、どんどんと死体に集っていく。
あっという間に死体は群青色に覆い隠されてしまった。
呆然と見ていると、蝶々が一斉に飛び立った。鱗粉を避けて顔を庇う。
ゆっくりと顔を上げてみると、目の前にあった死体が失くなっていた。
あれだけきつかった死臭も、綺麗さっぱり消えている。
目の前には、ボロボロに傷んだロープが、ゆらりと風に揺れているだけだった。
『放尿』
812 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/02/28(月) 22:17:55.59 ID:a/oDp9D00
友人の話。
舗装されていない峠道を歩いていて、急に尿意を催した。
辺りには見渡す限り誰もいなかったので、その場で用を足すことにした。
一面に広がる景色を満喫しながら、下の斜面に向かい思い切りよく放尿する。
と、飛沫で濡れた所の砂利が真っ黒に変色するや否や、突然ザーッと崩れ始めた。
あっという間に自分の足元まで崩落してきたので、慌てて身をかわして逃げる。
・・・用を足しながら。
安全な場所まで下がり、台無しになったズボンを情けなく思いながら、半ばまで削れた道に目を戻した。
思わず目を疑う。峠道はどこも崩れてなどいなかった。
道上に残っているのは、自分が描いた液体の軌跡だけ。
その時、頭上からゲラゲラと笑う声が聞こえた。
見上げたが誰もおらず、ただ愉快そうな響きだけが、斜面を駆け上っていったという。
『ジャミラが出た!』
813 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/02/28(月) 22:20:16.03 ID:a/oDp9D00
昔馴染みの話。
ボーイスカウトのキャンプで引率していると、ある河原で子供たちが騒ぎ出した。
「一体どうした?」騒いでいる子供をドヤしつけ問い質す。
「ジャミラが出た! ジャミラが出た!」
子らは口々にそう叫んでいた。
川向こうの繁みから怪しい影がヌッと現れて、こちらに大勢いるのを見るや否や、引き返していったのだと。
その姿はまるで、ウルトラマンに出てくる怪獣ジャミラみたいだった――
目撃した子供たちは皆口を揃えてそう言ったのだそうだ。
「今の子供らでもジャミラとか知っているんだなって、何とも興味深く思ったよ」
・・・印象に残るポイントがちっとズレてるんじゃないか?
私が些かズッ転けながら問えば、ヤツは頭を掻いて答えた。
「いや実は俺もガキの頃、あそこの原で見てるんだわ、ジャミラっぽいの。
だから聞いても別に驚かなかったんだけど。
・・・確かに、よくよく考えたら、ジャミラの方がおかしいか・・・」
お前さん、そうやって幾つもの“実は怪事”をやり過ごしてるんじゃないか?
そう問い掛ける私に、ただ「うーん」と唸るのみの彼だった。
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