∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part52∧∧
『小さな集落跡』
772 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/02/22(火) 20:27:28.63 ID:R5Igb54t0
友人の話。
夏の終わり、一人で山歩きをしていた夕暮れ、小さな集落跡と出会した。
土壁が崩れて屋根も落ちかけている廃屋が十軒ばかり。
物悲しい情景を味わいながらブラブラと歩いていると、どこからか歌声が聞こえてきた。
村のどこかで子供たちが童歌を歌っている。
はて、誰がこんな山奥まで子連れで遊びに来たものやら。
疑問に思い、歌声の方へ足を進めてみた。
見当を付けた場所へ行ってみたが、人っ子一人としていない。
すると今度は、通り過ぎてきた背後の角から歌声が聞こえてくる。
思い切り走って角の向こうを覗いてみたが、やはり子供の姿は見えなかった。
集落の隅から隅まで巡ってみても、子供たちに遇うことは叶わなかった。
諦めて下山することにし、集落を後にする。
童歌は途切れることなく続いていたが、直に聞こえなくなったという。
『愛用の品』
773 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/02/22(火) 20:30:08.71 ID:R5Igb54t0
山仲間の話。
初日の出を拝むため一人で登頂した。
仲間くらいしか行かない峰で、その年は彼以外のメンバーが都合付かなかったとか。
日の出を待つ間、独逸軍御用達のポケットコンロを引っ張り出し、湯を沸かす。
甘酒を拵えていると、横手から声が聞こえた。
面白い五徳だの
まじまじと闇の奥を見やったが、何も動く影はない。
ただ怖い感じは受けなかった。純粋に面白がっているような、そんな雰囲気。
愛用の品が受けた様子に気を良くし、
甘酒を紙コップに入れて、ついでに缶詰のパンも付けてから空き地の外れに置いておく。
お裾分け、といった気分だったらしい。
数時間後、御来光に手を合わせてから、放置した酒とパンを確認しに行く。
そこには空の紙コップだけが丁寧に置かれていた。
同好の士を見つけたような心地になり、上機嫌で山を下りたのだという。
『髪の毛』
774 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2011/02/22(火) 20:32:20.28 ID:R5Igb54t0
知り合いの話。
彼の祖父はかつて猟師をしていたという。
遊びに行った折に、色々と興味深い話を聞かせてくれた。
「ある時な、尾根筋を歩いていると、おかしなモンが降ってきた。
これがどう見ても髪の毛なんだ。それも真っ金々の見事な金髪。
目の前に流されてきたのを、ちょいと指で挟んでみて驚いたね。
儂の指に触れた所から、あっちゅう間に溶けて失くなっちうんだ。
気が付きゃぁ、あっちでもこっちでも金色のが山と落ちまくっとる。
これも地べたに落ちると、すぐにかすれて消えていきよった」
「まぁ、だからといってどうすることも無えから、そのまま歩いて抜けたがな。
山ン中じゃ結構そんなことが起きたけど、忘れちまった事も多いだろうなぁ」
泰然とした様子で祖父さんはそう言った。
次の記事:
『猫が人間を操って自分の意思を代弁させる』
前の記事:
『幽霊のくせに電車に乗ってくる』