∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part51∧∧
『生暖かい風』
835 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2010/11/12(金) 17:19:37 ID:12zXpuix0
友人の話。
高校の部活で、山を縦走していたという。
パーティの先頭になって歩いていると、前方より生暖かい風が吹き付けてきた。
嫌な臭いの風だな、と考えていると突然視界が暗くなる。
足から力が抜けふらっとしたところで、ぷっつり意識が途切れた。
次に目を覚ましたのは、病院のベッドの上だった。
彼を含めて四人の学生が点滴を受けていた。
「いきなり倒れ込んだ四人を残りの生徒がキャンプ場まで運び、そこから救急車でここまで搬送したんです・・・」
付き添いの後輩にそう教えられる。
急性アルコール中毒だろうと言われた。
原因はまったく不明。
幸い大事には至らず、翌日には全員退院したそうだ。
『飛渡祭り』
836 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2010/11/12(金) 17:20:34 ID:12zXpuix0
友人の話。
幼い頃、実家のある山村で飛渡祭りに参加していた。
燃える竹で餅を炙っていると、妙なモノが高みを飛んでいるのが見えた。
白くてジグザグの形をした平べったい物。御幣だ。
まるで生き物のように、フワフワと有り得ない軌跡を描いていたという。
一緒にいた兄に教えてみたが、彼にはそれが見えないようだった。
帰る時になっても、相変わらずそれは子供たちの頭上を飛び回っていたらしい。
祖母から「そりゃ十二様だよ。縁起が良いね」と言われたそうだ。
『見事な鹿』
837 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2010/11/12(金) 17:21:33 ID:12zXpuix0
知り合いの話。
彼の祖父はかつて猟師をしていたという。
遊びに行った折に、色々と興味深い話を聞かせてくれた。
「紅葉が綺麗な頃によ、見事な鹿を見つけたんだ。運が良いことに風下だった。
もう仕留めたモンも同然だと、逸る心を抑えながら引き金を引いたんだ。
でも、弾が出ねえ。ウンともスンとも反応がねえ。
馬鹿な今朝方手入れしたばっかりだぞ!って焦ってみたが、出ないモンは出ない。
そうこうしてる内に、鹿の奴は悠然と森ン中に消えてっちまった。
鹿がいなくなってからだわ、引き金の手応えが返ってきたのは。
その後は普通に山鳥なんぞ仕留めたんだがね」
「人に聞いたら、その鹿は十二様(山の神)の分じゃないかとサ。
年の最初に、その一年で神さんが取っちまう幸の分量が決められるって。
“これは神様の分”と定められた獲物にゃあ、下の者はどうやっても手が出せんってのが理らしいんだ。
ヨツ(獣)だけじゃなく鳥や魚、果ては山菜まで、どうしても獲ることが出来ない分があったって話だ」
「相手が神様じゃ、綱引きしても勝ち目はねえよなぁ」
祖父さんはさっぱりした顔でそう笑った。
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