∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part51∧∧
『アカハラ』
731 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2010/11/07(日) 16:31:28 ID:+RWlXtGj0
山仲間の話。
地元の山に入る時には、必ず煙草を持参すると彼は言う。
当の本人は煙草を吸わない。不思議に思って理由を聞いた。
「俺がよく行く峠にさ、人を襲う化け物が出るって言うんだ。
でっかい蜥蜴みたいな態で、そのくせ二本足で直立歩行するんだとか。
腰掛けて休んでた旅人を、後ろからパクッと咥え込んで山に消える。
そんな昔話を何度か聞かされた覚えがあるよ。
アカハラって名前が付いてた。腹が赤いのかね?
何故か煙草の脂が苦手みたいで、持っていると近よってこないって伝えられてる。
信じてる訳でもないけど、ま、いわゆる一つの御守り代わりさね」
下山の際、使わなかった煙草を一本慰霊碑等に捧げ、家路に着くのが彼流なのだそうだ。
『スニーカー』
732 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2010/11/07(日) 16:32:44 ID:+RWlXtGj0
友人の話。
彼の家は町の外れにあり、すぐ裏手からは深い山が始まっている。
立地のことで別に不満はないのだが、ただ玄関からよく物が失くなることがあって、それが困るのだという。
どうしてだか、失くなるのは決まって運動靴。それも右足の分片方だけ。
「犬は靴が好きだっていうから。
山から野良犬でも下りてきて、持って行くのかとでも思ってたんだけど。
でも我が家も犬飼ってるし、そんなのが玄関まで来たら吠える筈なんだけどなぁ」
そんなある夜、犬の散歩で山道を歩いていると、奇妙な物が前を横切った。
スニーカーがピョンピョンと、まるで小動物がするように飛び跳ねていた。
見覚えがある。間違いなく彼の家から失くなった分だ。
唖然とする彼を尻目に、スニーカーは繁みの中へと消える。
犬は別に何の反応も示さず、退屈そうに後ろ足で首を掻いていた。
・・・害あるモノじゃなかったようだ。うちの犬が惚けてなければだけど。
「それでさ思ったんだけど、山の神様って一本足だって言うじゃないか。
うちから度々靴を盗んでいるのって、やっぱ神様なのかな?」
真面目な顔でそんなことを聞かれても困ってしまう。
「過去のデータからすると、どうやら神様、ナイキがいたくお気に入りのようだよ」
重大な秘密を打ち明けるような調子で、彼はそっと囁いた。
『オートロック』
733 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2010/11/07(日) 16:33:33 ID:+RWlXtGj0
仕事仲間の話。
遠場に仕事へ出掛けた折、帰りが深夜になったので、車中泊をすることにした。
峠道の途中で山へ入る口があり、その奥に丁度車を停められるスペースがあったので、これ幸いと乗り入れ、休むことにする。
シートを倒し、疲れた身体を横たえていると、突然ガチッ!と耳障りな音がした。
車のオートロックが解除されていた。
キーは車に挿したままだった。身体が解除ボタンに触れた訳でもない。
不審に思いながらも再びキーをロックし、横になる。
しばらく後、またもガチッ!とアンロックの音がした。
慌てて即座にロックし直すが、その直後にまた解除された。
どうにも気味が悪くなってしまい、すぐにエンジンを駆けてそこを飛び出した。
結局、その山を下りた場所の避難所で夜を明かすことになった。
そこではオートロックが解除されることはなかったという。
帰宅後、整備会社に車の調子を見てもらったが、どこにも不良箇所はなかったそうだ。
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