∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part51∧∧
『緑色の物』
376 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2010/10/20(水) 18:33:17 ID:WAVoq6M80
知り合いの話。
子供の頃、山裾に開けた原で遊んでいると、不気味な物を見つけた。
川の中程に緑色の物が引っ掛かっていたのだ。
一番の怖い物知らずが水に踏み込み、それを手にして帰ってきた。
間近で見た皆が皆、「何だこれ?」と考え込んでしまった。
大きさは自分たちの二の腕くらい。緑色でブヨブヨと柔らかい。
中程が肘みたく曲るようになっており、端には指にも見える突起が三本。
間の膜は水掻きにも見える。そして何より、えらく生臭い。
知り合いのお爺さんが通り掛かったので、呼び止めて聞いてみた。
「こりゃカワッパの腕だ。
腕抜けといってな、あいつらの腕を引っ張るとポンって抜けるんだ。
時々そそっかしい奴腹がいて、こうやって下流に流しちまう。
さぁ川に返しておやり。そのうち拾いに来るからな。
うっかり持って帰ったりすると、家まで取りに来るぞ」
そんな気味の悪い代物を、持って帰ろうとする子はいなかった。
言われた通り、元の川に流してやったという。
「あれ、持って帰ってたらどうなってただろうな。
河童が見られたのかな? 今考えると惜しいことしたかも」
彼はそう言って苦笑した。
『軽めのハイキング』
377 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2010/10/20(水) 18:39:21 ID:WAVoq6M80
友人の話。
浅い山で軽めのハイキングを楽しんでいた。
午後の中半、道脇の石に腰を下ろし、軽く食べて休憩しようとザックを開けた。
菓子パンを取り出していると、視界の隅に何か蠢く物がある。
顔を上げると、少し離れた道上に見慣れた形が落ちていた。
自分のものと同じくらいの大きさの、人の右手。
丁度手首から上の部分が、地面の上で指をゆっくりと開いたり閉じたりしている。
白い肌に浮いた青い静脈がいやに目に付く。
何を見ているのか理解するより早く、手はスススッと滑るようにこちらに向かってきた。
「うわぁ!」思わず声を上げ、後ろに仰け反り石から転げ落ちた。
慌てて起き上がり辺りを見回すと、もう右手はどこにも見えない。
そしてまだ一口も食べていない菓子パンも、綺麗さっぱり無くなっていた。
『足代』
378 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2010/10/20(水) 18:40:53 ID:WAVoq6M80
知り合いの話。
山道を歩いていると、頭上から「おーい」と誰かが呼んできた。
見上げても誰もいない。
首を傾げていると、すぐ背後から言葉がかけられた。
「どこに行くのだ?」
つい反射的に「近くの里の親戚だ」と答えてしまう。
すると見えない誰かはこう宣った。
「腰の酒をくれるなら運んでやろう」
確かに酒をぶら下げてはいたが、これはその親戚への手土産だ。
「いやそりゃダメだ・・・」と返す間もなく、いきなり背中から抱き上げられる。
目の前の風景がグニャリと溶けたかと思うと、次の瞬間、見覚えある屋敷の前に立っている自分に気がついたという。
慌てて腰をまさぐったが、酒瓶は綺麗に空となっていた。
しかもそこは、確かに親戚の屋敷ではあったけれど、その日彼が訪れる予定の家ではなかった。親戚違いだ。
「間違えて配達された上に、足代までしっかり取られちまった。
まったく、この山の天狗様はそそっかしくて困るよなぁ」
彼は頻りにそうぼやいていたという。
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