∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part51∧∧
『人が寄りつかない沢』
87 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2010/10/01(金) 20:51:47 ID:PlJ4YC6p0
知り合いの話。
彼の住む町の外れに、人が寄りつかない沢があるのだという。
山を少し入った所にあるその沢は、底の方に分厚い粘土が溜まっているらしい。
この沢辺を歩いていると、足元に何かがベシャリと投げ付けられるそうだ。
まだ水を滴らせた、濡れた粘土の塊が。
誰かが握ったかのように、表面には指の痕らしき太い筋が四本浮いている。
間違いなく水底から掬われたものだが、沢の面はどこも乱れなく静かなまま。
辺りには自分たち以外誰の姿も見えない。
大抵の人はその時点で逃げ出す。
だから一体誰が土塊を投げているのかはわからない。
「昔からあそこには鬼が棲んでいるって言われてるんだ。
だから誰も寄りつかないんだよね」
さらりと彼はそう言った。
『山中の村』
88 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2010/10/01(金) 20:53:02 ID:PlJ4YC6p0
友人の話。
彼の実家は山中の村なのだが、そこに里帰りすると、必ず奇妙な体験をするらしい。
帰郷した翌日に目を覚ましてみると、起き上がることが出来ないというのだ。
腰が抜けたかのようにまったく力が入らない。
前日は大した運動もしていない筈なのに、至る部位に筋肉痛も感じる。
実家の人間に言わせると、夜中に河童と相撲を取ったのだろうという。
河童は眠り込んだ人を操れるそうで、
意識のなくなった人を寝床から外に誘い出して、一晩中相撲を取って楽しむのだと。
友人は偶にしか帰ってこないので、河童たちも懐かしくて嬉しくて、ついつい相撲を取りまくってしまうのだろう。
家人はそう笑っていた。
「河童に知り合いはいないんだけど、
家の者が言うには、この辺の河童は村の住民一人一人を皆覚えてるっていうんだ。
別に眠るの待たなくても、相撲くらい付き合ってやるのになぁ。
・・・あーでも、やっぱり一晩ぶっ続けってのは、勘弁して欲しいかなぁ」
友人はどこかしら困った顔でそう言っていた。
『石神様』
89 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:2010/10/01(金) 20:54:51 ID:PlJ4YC6p0
幼馴染みの話。
彼が昔住んでいた団地は、山を切り開いて造られていた。
その山から切り出したのだろうか、団地の外れに、大きな石が置いてあった。
綺麗にされてはいたが、石碑のように字が彫られている訳でもなく、ただ単純に置かれているだけだったという。
子供たちはその石を『石神様』と呼んでいた。
この石神様、夜になると時折、低い声で笑っていたらしい。
彼もそれを聞いたことがあるという。
熟帰りに自転車を押して横を過ぎると、間違いなく石の方から「フフフ」と含み笑いするような声がしたのだと。
「おー本当だったんだ」と子供心に感心し、一つ手を合わせて拝んでから、その場を後にしたそうだ。
「怖くなかったの?」という私の問いに、
「何が?」と彼は不思議そうな顔で問い返した。
その団地も再開発が進んでいる。石神様は今も笑っているのだろうか。
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