∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part49∧∧
『山中の溜め池』
423 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2010/05/19(水) 23:49:01 ID:suyesW9+0
友人の話。
山中の溜め池で釣りをしていると、後から足音が近付いてきた。
誰か来たのかなと考えていると、すぐ横を髪の長い女性が足早に通り過ぎる。
失礼な人だなと思うより早く、そのままザブザブと水の中へ入っていった。
あっという間に全身が没し、波紋だけ残して見えなくなった。
入水自殺かと慌てていると、直ぐにまた背後からの足音が聞こえてきた。
さっきとまったく同じ後姿が通り過ぎ、再び水中に分け入っていく。
しばし呆然としていたが、三度目の足音が聞こえた瞬間、撤収の準備を始めた。
片付け終わって車に戻る間、彼はずっと顔を伏せたままにしていた。
女性の顔を見るのが怖かったからだと彼は言う。
もし目が合ってしまえば、何かとんでもないことになるような気がしたからだと。
その後しばらく、そこには近よらなかったそうだ。
『地鼠』
424 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2010/05/19(水) 23:51:31 ID:suyesW9+0
知り合いの話。
幼い頃、山中の棚田で大きな地鼠を見つけた。
石を拾って投げ付けていると、お祖父さんが駆けよってきた。
「追い払うのはいいが、ぶつけたりして無用な殺生はするんじゃないぞ」
そう注意された。
「こんな山奥の田圃で過ぎた殺生しちまうとな、アッケに罹ってしまうんだ。
この病いに罹ると全身の穴から血を噴きまくって、最後には手足や顔までグズグズに溶けて崩れ死んじまう。
山田の神様の障りかもしれん」
「ネズ公は自分たちが追い払うから、お前は近よらなくていい。というか近よるな」
祖父はそう言って、彼の頭を撫でてくれたという。
『ポリバケツ』
425 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2010/05/19(水) 23:52:28 ID:suyesW9+0
山仲間の話。
夕暮れ時の山道を歩いていると、行く手にポリバケツが落ちていた。
よくある水色の物で、えらく古びている。口を下にして逆さまになっていた。
持って下りて処分しようかと思い、手を伸ばす。
バケツは生きているかのように、ズズッと滑って彼の手から逃れた。
中に動物でも入っているのか。
猶も逃げようとするバケツに追い縋り、手を掛けて持ち上げた。
アレ?地の上には何も見えない。
その時、手の中から「ククク・・・」と笑い声がした。
手にしたバケツの中に老人の顔があって、それがニヤニヤと嘲笑っている。
思わず放り出すと、バケツは派手な音を立てて道上に転がった。
こちらに口を向けて止まる。その中身は空で、爺の顔などどこにも見えない。
結局そのバケツを下げ直して山を下りたが、あの顔は二度と現れなかったそうだ。
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