∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part49∧∧
『祠を移動させた』
143 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2010/04/19(月) 21:11:50 ID:E4l2Qu6S0
知り合いの話。
家の敷地の外れに、いつ造られたのかもわからない、小さな祠があったという。
その一角にアパートを建てることにしたので、祠を移動させることにした。
取り立てて信心深い訳ではなかったが、潰してしまうのも躊躇われたので。
祠は近所に住む、親戚の土地へ移された。
祠を移して間もなく、敷地内にある二つの井戸が同時に涸れてしまう。
仕方ないので、新しく市水道を引くことにした。
反対に祠を移した親戚の家では、随分と前に枯れていた井戸が、再び水を噴きだした。
現在その井戸には良質の水が満ちているという。
「あの祠、本物だったかな。惜しいことした」
水道の申請に伺った私に向かい、彼はそう言って苦笑した。
『白い線』
144 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2010/04/19(月) 21:13:00 ID:E4l2Qu6S0
山仲間の話。
暗い山道を一人歩いていると、行く手に一本の白い線が見えた。
地と天とを繋ぐ糸のように、細い筋が真っ直ぐに立ち上がっている。
近づいてみると、それは見事な刺繍が施された布の帯だった。
下端は地面に少し触れてたくれている。時折微かに揺れては土を擦っていた。
見上げれば、星明かりの中浮かび上がる白い帯が、果てなく天に吸い込まれている。
手を触れるのが躊躇われ、結局何もせずにその場を立ち去ったのだという。
道が折れる最後に振り向いてみたが、やはり白い線は延々と天地を結んでいた。
『引率』
145 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2010/04/19(月) 21:14:38 ID:E4l2Qu6S0
私の体験した話。
高校生の時、県の登山大会が私の母校で実施された。
私は何校かの生徒を引率することになった。
近場の山を二つほど経由して、最終的に母校のグラウンドへ誘導するのが仕事だ。
部員たちだけで予行演習も行い、準備は万端だった。
当日、通い慣れた山道を先頭に立って歩いていると、違和感に襲われた。
何かがおかしい。
慌てて確認すると、自分が道を派手に間違えていることに気が付いた。
何処でどう間違えて、また自分がどうしてそれに気が付きもしなかったのか。
全然わからない。
その時、山の何処かで、誰かが笑うのが聞こえた。
私のことを笑っているというのが、不思議なことにこちらに伝わってくる。
不思議なことに、他の生徒にはその声は聞こえていなかった。
化かされて道を間違えたと言っても、誰もまともに聞いちゃくれないだろうなぁ。
ひどく情けない心情で、皆に謝りながら道を引き返した私だった。
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