∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part49∧∧
『おーい』
102 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2010/04/13(火) 22:00:03 ID:9ne7yEpL0
山仲間の話。
山道の整備をしていると、どこからか「おーい」と呼ぶ声が聞こえてきた。
幼い女の子の声のようだ。
「どうしたー?」と声のする方に何度か呼び返していると、不意に耳元で囁かれた。
「みーつけた」
びっくりして振り向いたが、自分の姿以外に人影はない。
気にしないようにして、作業を続けることにした。
作業の間中、頭の周りでクスクスと楽しそうな笑い声が聞こえていた。
「楽しそうだな」そう口に出してみたが、クスクス囁くばかりで返事はない。
まぁいいさ。元より返事など期待していない。
これまた気にしないようにして、作業に専念した。
結局山を下りるまで、楽しそうなクスクス笑いに付き纏われたという。
『頑張るさん』
103 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2010/04/13(火) 22:01:21 ID:9ne7yEpL0
先輩の話。
彼は卒業後も度々、部活の指導や手伝いをしに来てくれていた。
その都度、各地の興味深い山話を聞かせてくれた。
「ある小さなキャンプ場なんだけどさ。一応トイレがあるんだ。汲み取りだけど。
でも一番奥まった大用の個室は、誰も使う奴がいない。
そこで用を足しているとね、覗かれるっていうんだ」
「いや人に覗かれるんじゃない。牛だってさ。
しゃがんでると、天井の方からモゥモゥ聞こえてくるんだって。
振り仰ぐと、ニヤニヤ笑ってるような顔の、牛の首だけが見えるんだと。
こっちの用が済むと、掻き消すように消えるっていうけど。
逆に言えば、用が済むまでは消えないってことだよな」
「頑張るさんって呼ばれてる牛さんで、便所の神様ってことにされてる。
本当にそうなのかは、誰も知らないけど。
前から疑問なんだけど、一体この牛さん、何を頑張ってるんだろうな」
『山奥の火葬場』
104 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2010/04/13(火) 22:03:18 ID:9ne7yEpL0
同僚の話。
彼はメンテの仕事で、山奥の火葬場によく出向くのだという。
いつの間にか掃除係の小母さんと顔馴染みになった。
この小母さんはそこで働いて長いらしく、何かの時は一番頼りになるのだそうだ。
ある時、焼き場裏の機械室に入ろうとしたところ、小母さんが小声で呼び止めた。
「今は止めた方がいいよ。中で沢山騒いでるから」
真顔でそう忠告してきた。
ハタと思い当たる。
そういえばこの機械室にいると、何度か不気味な思いをした。
例えば、誰かに服の端を引っ張られて振り向いたのだが、そこには誰もいないとか・・・。
例えば、自分一人しかいない筈なのに、誰かに脇腹を突かれるとか・・・。
そんなことが多々あった。
彼はかなり鈍感らしいが、そのような体験は出来れば避けたい。
素直に忠告を受け入れたのだという。
以来その室に入る前には、必ず小母さんに見てもらってからにしているそうだ。
彼は秘かにその小母さんのことを“主様”と呼んでいる。
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