∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part49∧∧
『休憩して一服』
29 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2010/04/03(土) 21:34:03 ID:Jf276H900
知り合いの話。
山の手入れをしていた時のこと。
下草を一通り刈った頃合で腰を下ろし、休憩して一服つけることにした。
のんびりと紫煙を燻らせていると、頭上の梢から細長いモノがスルスルと降りてきた。
着物や浴衣に使う帯だった。
どう見ても布製のそれは、まるで蛇のように鎌首をもたげ、彼の周囲を探り始めた。
匂いを嗅いでいるようなフンフンという息音が聞こえてくる。
煙草の煙が掛かった途端、帯はその動きを止めた。
ヘクシッ!
帯はクシャミみたいな声を出して猛然と首を振り、あっという間に梢の間に戻って消えた。
最初から最後まで、彼は煙草を咥えたまま身動き一つ出来なかったという。
『カタケンパ』
30 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2010/04/03(土) 21:35:31 ID:Jf276H900
知り合いの話。
彼の地元の山では、夕暮れ時になると不気味な物が現れるのだという。
薄暗い山道を歩いていると、後ろからケンケンと飛び跳ねる音が近づいてくる。
振り向くと、一本足の真っ黒い影が、こちらの後を追って来ている。
影は人の形を取ってはいるが、酷く頭でっかちで、両手がやけにひょろ長い。
地元ではカタケンパと呼ばれており、案山子が化けた物として恐れられていた。
というより、頑なに「アレは案山子だ」ということにしようとしていたものらしい。
気の強い若衆が「案山子などどこが怖いものか」と大見得を切って、カタケンパの出る山に向かったことがある。
しかし幾ら待てども男は帰ってこなかった。
しばらくしてから、追ってくるカタケンパの数が二体に増えたという噂が流れた。
それからというもの、カタケンパに近づこうという者は出なくなったのだそうだ。
彼自身は、その山道を歩いたことはないという。
「例え片足が出なくとも、あそこは十分気味が悪いから」なのだそうだ。
『吹雪の中』
31 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2010/04/03(土) 21:37:13 ID:Jf276H900
知り合いの話。
地元の山で遭難者が出た。
単独山に入っていて、突然の大吹雪で山を下りられなくなっらものらしい。
天候等の状況からして生存は厳しいと思われたが、二日後無事に保護された。
どうやって寒さを凌いだのか尋ねると、顔を顰めて答えたくない様子を見せる。
しつこく問い質したところ、おかしなことを言い出した。
「吹雪の中で彷徨っていると、唐突に、有り得ない物に出会したんです。
赤い布団が雪の上にポッコリと盛り上がっている、そんな物体が目の前に現れた。
炬燵でした。布団を捲ると中はほっこりと暖かかったんです。
だから必死で中に潜り込んで、雪を避けたんですが。
いつの間にか、つい寝てしまって・・・目が覚めると、吹雪は止んでました。
這い出してから下ってるところを皆さんに助けて頂いたと、そういう訳で。
・・・信じて貰えるとは、思ってませんけど」
皆が何とも言えない顔をしていると、最年長の山男がこう漏らした。
「炬燵で良かったなぁ。カマクラだったら山に取られてた」
結局、炬燵の話は聞かなかったことにして、この件は幕を下ろしたのだという。
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