∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part48∧∧
『川沿いの山道』
570 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2010/01/15(金) 23:26:11 ID:7iwrDmTq0
知り合いの話。
春先の暖かい日に、川沿いの山道を歩いていた。
すると、川上から奇妙な物が流れてくるのに気が付いた。
大きな平べったい四角。上に白い影が置かれている。
流れてくるにつれ、それが何か目視で確認できるようになった。
雨戸などに使われる大きな戸板だ。
そしてその上にゴロリと寝かされた、死に装束に身を包んだ男性。
非現実的な光景に硬直していると、川面を破って毛むくじゃらの腕が突き出される。
腕は戸板の縁に指爪を掛け、一気にひっくり返した。
戸板もその上の亡骸も、次の瞬間水の中へ消えていた。
不思議なことに、水飛沫も水音も、何一つ見えなかったし聞こえなかったという。
白昼夢を見た思いでそのまま歩き続けた彼は、やがて小さな廃村に辿り着く。
当然のことながら誰の姿も無く、あの戸板を川に押しやった者も確認できなかった。
『タブラ』
571 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2010/01/15(金) 23:27:14 ID:7iwrDmTq0
先輩の話。
山を歩いていて道に迷った。どこをどう歩いても、見知った道に辿り着けない。
疲れ果て、仕方なく腰を下ろして一服することにした。
煙草に火を付け大きく吸い込み、紫煙を吐き出す。
と、自分が覚えのある小道で休んでいることに気が付いた。
訝しく思いながらも、サッサと下山することにする。
以降は道を失うことは無かったという。
麓の雑貨屋に辿り着くと、馴染みの小母さんに今体験したことを話してみた。
「タブラに誑かされたね。
いやタブラってのは狸や狐の類じゃなくて、小さな黒い蜥蜴。
ここらじゃ人を化かすのは、昔から蜥蜴だと決まっているんだ」
「狐にも化かされたし、四国じゃ狸、中国山地じゃ川獺にもやられた。
蜥蜴は初耳だったけど体験しちゃったし、後は狢に化かされるだけだな」
先輩はなぜか嬉しそうな顔でこう言っていた。
『クロハイ』
572 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2010/01/15(金) 23:28:13 ID:7iwrDmTq0
友人の話。
夕暮れの里道を一人下っていた時のこと。
後ろの山方から「おーい」「おーい」と口々に呼ぶ、大勢の人声がした。
振り返ると山から里道にかけて、何か黒い物がズルズルと流れ出している。
しばらく自分が見ている物が何かよくわからなかった。あまりに数が多かったので。
黒くグズグズの、爛れたように見える人型の群れ。
足が使えないのか、どの影も腕で膝行ってくる。
影の幾つかが時折手を振り上げては「おーい」と呼び掛けてきた。
考えるより先に足が動いていた。脱兎のごとく逃げ出す。
呼ぶ声はしつこく付いてきたが、決して振り返らなかった。
家に辿り着いて落ち着くと、悪い幻でも見たのかという気持ちになった。
夕食時に話してみたが、祖父が「クロハイか。捕まらなくて良かったの」とポツリ
呟いたのみで、それ以上は話題に上らなかった。
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