∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part48∧∧
『餅搗き』
558 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2010/01/13(水) 21:00:38 ID:QZN/BWZF0
仕事仲間の話。
彼の会社では年末になると、山の児童公園を借りて餅搗き大会を催している。
従業員の家族は勿論、仕事で付き合いのある人たちも呼んで、結構賑やかなのだそうだ。
ある年、彼は奥さんと一緒に、搗かれたばかりの餅を丸める持ち場を担当していた。
それなりに楽しんで作業していると、いきなり奥さんが「あら?」と声を発した。
どうしたのと聞くと「今何か肘に当たった・・・」と言う。
その時。
奥さんの横手に広げられた餅取り粉の上に、足跡が湧き出た。
小さな赤子ほどの、人の足跡が。
足跡はそのまま、パパパッと粉を撒き散らして走っていき、端で切れて見えなくなった。
しばらく二人で固まっていたが、結局見なかったことにして、餅搗きを終えたという。
『冷気』
559 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2010/01/13(水) 21:01:29 ID:QZN/BWZF0
山仲間の話。
朝飯にラーメンでも作ろうと、テントの中でお湯を沸かしていた時のこと。
いきなり冷気に襲われた。
骨の髄まで冷え切るような、冷たい空気に包まれる。
カチカチと自分の歯が鳴る音を、初めて聞いたという。
凍えて動けなくなっていると、始まった時と同様、冷気は突然に消え去った。
かじかむ指をほぐしていると段々と温みが戻ってくる。
ハッと気が付いて、火にかけたコッヘルを覗き込む。
つい先程まで湯気を立てていたお湯が、ほんの一瞬で冷たくなっていた。
面には薄氷が張っている。
あの冷気が包んだのは自分の体だけではなかったらしい。
「冬山に慣れている人が偶に遭難することがあるけど、アレってあんな冷気の類に襲われたんじゃないか・・・
そんなことを考えちゃったよ」
彼はそう言っていたが、閉め切ったテントの中に突然現れた冷気については、今も説明が付けられないのだそうだ。
『山小屋』
560 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2010/01/13(水) 21:03:22 ID:QZN/BWZF0
山仲間の話。
雪で山小屋に足止めをくらっている夜のこと。
寝ていたところ、人の話し声で目を覚まされた。
小屋の隅の方で五、六人が車座になって、何やらガヤガヤと話し込んでいる。
結構大きな声だった。
常識がないなとムッとし「少し静かに話してくれませんか」と注意した。
すると話し声がピタリと止まり、車座の皆が顔をこちらに向けてくる。
薄暗い中で、何故か顔だけが白く浮き上がってはっきりと見えた。
こちらを向いた一団は、皆がまったく同じ顔をしていた。
その後の記憶がはっきりしないのだという。
ハッと気が付くと、小屋の中は既に曙光で白んでいた。
いつの間にか夜が明けていたらしい。雪も止んでいる。
山小屋の中にいるのは彼一人だけだった。
思わず、昨夜彼らが座っていた辺りを調べてみた。
床の上には、誰かがいた痕跡など塵も残っていなかった。
その時は悪い夢でも見たのかと思って済ませたのだが、
その二年後、同じ山小屋で寸分変わらず同じ体験をしたそうだ。
やはり雪の夜で、一人きりの時に。
「もうあそこは利用しない。俺とは相性が悪過ぎる」
彼はそう言ってぼやいていた。
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