∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part48∧∧
『モッコとムッコ』
357 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/12/26(土) 20:26:54 ID:rWKabWLG0
友人の話。
子供の頃、夜更かしをしていると、よくこう言って叱られたという。
「早く寝ないと山からモッコとムッコが下りてくるよ。
彼奴ら怖いからね。捕まったら皮剥かれて食べられちゃうよ」
子供心に恐ろしいモノだと認識していたのだが、どんな姿をしているのだろうと長いこと疑問に思っていた。
先日里帰りした折、顔見知りの小母さんと世間話していると、モッコとムッコのことが話題に上った。
「どんなモノノケなんだろうって、小さい時から不思議なんですよ」
彼が何の気無しにそう漏らしたところ、小母さんはあっけらかんと答えた。
「あぁモッコかい。蒙古のことだよ」
「蒙古って、元寇の時攻めてきた、あの蒙古のことですか?」
驚いて問い返すと、改めて教えてくれた。
「そう、その蒙古。
こっちのお国言葉で訛っちゃって、モッコになったのね。
ちなみにムッコっていうのは剥くって言葉が変形したんだって、学校の先生に
聞いたことがあるわ。蒙古が皮を剥くで、モッコとムッコになった訳」
彼は呆れたような顔でこの話をしてくれた。
「うちの実家って東北の山奥なんだぜ。
そんな遠い場所で妖怪になるなんて、奴らどんな暴れ方をしたんだろうな」
『雀脅し』
358 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/12/26(土) 20:27:54 ID:rWKabWLG0
知り合いの話。
山間の棚田に雀脅しの設置をしていた時のこと。
雀脅しとは、カーバイドと水からアセチレンガスを発生させ、それを爆発させて大きな音を出す爆音機のことだ。
タイマーを利用して火花を飛ばすのだが、確認のため試しに動かしてみた。
パコォォーーンッ!
炸裂する大きな爆音が谷間に響き渡る。
と、すぐ背後でドサッと何かが落ちる音が聞こえた。
驚いた猿でも木から落ちたかな。振り返って見る。
白い人型が地面の上で腰をさすっていた。しかし明らかに猿でも人でもない。
身体の彼方此方に、色々な顔付きをした、大小様々の顔が付いていたのだ。
至る所の口から「痛てて」「痛てて」と連発しながら、頭の部位にある一番大きな顔が恨めしそうな表情で彼を見た。
言葉を無くす彼を見ているうち、どの顔もやれやれと言った苦笑いに変わり、
ゆっくりと立ち上がってから森の奥へ姿を消したという。
『三つの案山子』
359 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/12/26(土) 20:28:42 ID:rWKabWLG0
友人の話。
山間の、棚田の間を走る細い道が、彼の通学路だった。
ある夏の朝、見覚えのない物が田中に立っているのに気が付いた。
三つの案山子で、どれも少しおかしな格好をしている。
「あんな所に案山子を追加する必要あんのかな?」
そう不思議に思いながら通り過ぎた。
夕方帰ってくると、朝の案山子はどこにも見えなくなっていた。
代わりに、田の持ち主のお爺さんが鎌を手にして、畦道に座り込んでいる。
「逃がした」とかぶつぶつ言いながら、目の前の地面を引っ掻いていた。
「何を逃がしたんだい?」と聞くと「案山子だよ!」と怒鳴られた。
ふっと、頭の中を奇妙なイメージが横切った。
鎌を振り回す祖父さんから、三体の案山子が必死で逃げている姿。
それ以上聞く気になれず、そこから立ち去ったのだという。
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