∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part48∧∧
『バス釣り』
120 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/12/11(金) 21:33:07 ID:VahUBvCy0
友人の話。
釣り仲間と二人で、山中の溜め池へバス釣りに出かけた。
早速アタリが来た。思い掛けず強い引きに驚きながらも喜ぶ。
これは中々のファイトが楽しめそうだ。
手近まで引きよせてから、グッと上げてみた。
小振りなバスが水上に現れたが、オマケが付いてきた。
バスの尻尾を、小さな毛むくじゃらの手がしっかりと掴んでいる。
腕から先は水中に没したままで。
次の瞬間糸が切れ、彼はもんどり打って転げた。
起き上がってみると、水面には大きな波紋が広がっているだけで、他は何も見えない。
「仕方ない、帰ろうか」
来て間もないというのに、仲間がそう言って道具を仕舞い始めた。
「あの手が出るとな、必ず坊主になるんだ」
憮然とした顔で二人、帰途に着いたのだそうだ。
『夜釣り』
121 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/12/11(金) 21:34:09 ID:VahUBvCy0
友人の話。
釣り仲間と二人で、近場の池へ夜釣りに出かけた。
場所は程良く山に踏み入った所で、月明かりの下、竿を振っていたという。
いきなり水音がした。重い物が飛び込んだかのような、そんな音。
少し離れた水辺にいつの間にか子供が現れていて、石を拾い上げては投げ込んでいる。
今時珍しい着物姿で、女の子のようだ。
「こんな時間に何してんだろ。止めてもらってくるわ」
仲間がそう言って子供の方へ向かう。
傍に達したとみるや、即座に駆け戻ってきた。
「帰るぞ!」それだけを口にし、竿を抱えて走り出す。
彼も慌てて後を追い、入り口に停めてあった車まで駆け戻った。
様子からして、自分を置き去りにしてでも帰りそうな雰囲気を感じたのだ。
どうしたんだ一体? 発進した車内でそう尋ねたところ、青い顔で答えられた。
「あの子、顔がノッペラボウだった」
街の灯りが見えるまで、二人とも口を開かなかったという。
『沢釣り』
122 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/12/11(金) 21:35:12 ID:VahUBvCy0
友人の話。
釣り仲間と二人で、沢釣りに出かけた。
いつもとは違う場所で釣ってみようと散策しているうち、良い感じの淵が見つかった。
あまり人の来ない場所なのか、入れ食いのように釣れたそうだ。
夢中になって竿を振っていると、急に手応えが重くなった。
根掛りでもしたかと思ったが、力を入れるとゆっくり引き戻ってくる。
高い竿を折っては面白くない。
竿を下ろして手でラインを引っ張り、回収することにした。
しばらくそのまま引っ張り続けていたが、段々気味が悪くなってきた。
こんなに長く糸を送ってはいない筈だけど。
しかし糸は延々と淵の奥方から引き出されてくる。
憑かれたように、彼は糸を引き続けた。
いきなり連れが大声を掛けてきた。
「お前、何を引き摺り出してるんだ!?」
ハッとして手元を見ると、手の中にあったのは、5ミリ程もある太い何かだった。
明らかに釣り糸ではない。黒くて僅かに弾力を感じる。
連れに指摘されるまで、彼はラインがどんどん太くなっていることに気が付いていなかったらしい。
123 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/12/11(金) 21:36:08 ID:VahUBvCy0
慌てて手の中の物を放り出す。
次の瞬間、足元に積み上がっていた太い紐が、凄い勢いで水中に引き戻された。
ラインはあっという間に淵の中へ姿を消し、置いていた竿も没して見えなくなる。
しばらく二人で呆然と水面を見やっていたが、やがてぷかりと、彼の竿だけが浮かび上がってきた。
恐る恐る引き寄せてみると、糸は切られていてほとんど残っていなかった。
「・・・お前、何かに釣られかけたんじゃないか?」
連れが渋い顔をして聞いてきたが、答えようもない。
すぐにその場から撤退したのだという。
以来、その淵の近くには寄らないように注意しているのだそうだ。
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