∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part47∧∧
『ヤカン』
960 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/12/02(水) 21:53:10 ID:i8xVAx920
仕事仲間の話。
業務で山奥に入っていると、大きな邸宅に出くわした。
今風のデザインが、場所も相まってひどく違和感を感じさせたという。
門を開けて中を覗いたが、誰も居る気配がない。
インターホンを押しても反応がなく、かと言って押し入るのも躊躇われ、
塀伝いにぐるり一周してみると、綺麗に手入れされた日本庭園があったらしい。
庭池の立派な錦鯉に感心していると、不意に誰かの視線を感じた。
辺りを窺っても自分の他には誰もおらず、気味が悪くなったので退散することにした。
次の日の朝、自宅で目を覚ました彼は、右腕に痛みを覚えた。
見れば手首から肘に掛けて、皮が広く剥けて失くなっている。
滲んだ血が布団を汚していた。
居間に下りて手当てをしていると、事情を聞いた父がこう言った。
「ははぁお前、どうやらヤカン(野干)さんの屋敷に入ってしまったな。
ヤカンさんていうのは狐の眷属で、人の皮が大好物なんだと。
お前が無断侵入したものだから、その代償で腕の皮を取られたんだろう。
それだけで済んで良かったな。
聞いた話じゃヤカンさんって、稲荷さんよりかなり荒っぽいらしいから」
「無断進入したつもりはないんだけどな・・・」
包帯を巻きながら、釈然としない思いに囚われたという。
『ネブト』
961 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/12/02(水) 21:54:25 ID:i8xVAx920
友人の話。
彼の実家の山では、変わった蛇が目撃されていたらしい。
山道を歩いていると、丸太のような物が横倒しになって行く手を塞いでいた。
近よってみると、この丸太には大きな鱗が生えていて、しかもズルズルと動いている。
これが幾ら待ってみても、尻尾の先が出てくることはない。
かと言って太い蛇体の上を跨ぐ気にもなれず、仕方なく引き返すことになるという。
これまで決して頭も尻尾も見られたことのない大蛇。
地元ではネブトと呼ばれていたそうだ。
最近は目撃例がないのだという。
「いや、単に山奥に人が入らなくなっただけかもしれないけどね」
彼はそう断りながらこの話を聞かせてくれた。
『狐憑き』
962 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/12/02(水) 21:55:50 ID:i8xVAx920
知り合いの話。
彼の実家のある山村では、よく狐憑きが発生したのだという。
「私も祖父に聞いたことがあるだけで、実際に目にした訳ではないけどね。
何でも村の伝えによると、昔の村民たちが地の狐たちと諍いを起こしたらしい。
それ以来事ある毎、狐に目の敵にされたのだとか」
「面白いと言っては何だが、あまりにも憑かれたせいか、経験値が高くなったようでね。
対処法というのがちゃんと確立されていたんだ。
“狐憑きが発生したら、ヤマシロで作った艾で灸を据える”と、そういう流れになっていたらしい。
狐はヤマシロの薬効が大の苦手で、すぐに落ちて元に戻るという話だ。
祖父自身は経験しなかったが、親戚が何人か灸でヒィヒィ言っていたのを見たって」
ヤマシロって何ですか? わからなかったので聞いてみた。
「大麻のことだよ。
狐はどうやら、大麻の匂いというか成分が駄目みたいだね。
今は栽培も厳しく規制されているし、とても艾なんて作れないけど。
狐憑きも出なくなったみたいだし、まぁこれも時代の移り変わりなんだろうね」
そう言ってニコニコと笑っていた。
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