∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part47∧∧
『肉』
762 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/11/17(火) 18:25:37 ID:5s8Q8HvZ0
友人の話。
彼の連れに、いわゆる“見える人”がいるのだという。
二人で山奥の神社へ出掛けた折に、その連れが境内の一角をじっと見つめたまま動かなくなった。
「何か見えるか?」そう尋ねたところ、連れは短く答えた。
「肉がいる」
何だそれはと問うてみたが「肉は肉だ」と、それしか答えない。
しつこく問い質すと、桜色をした肉の塊が境内の隅を這っているのだという。
引き攣った友人の顔を見て、連れは息を一つ吐いてから続けた。
「大丈夫、悪いモノじゃないと思う。
時々、烏や犬がかぶり付いているから、毒もないんじゃないかな。
古い神社には割といるんだ、あの肉。
初詣の後なんか明らかにブクブクと大きく育ってる。
ひょっとしたら、人が吐き出していった願い事や悩み事を喰ってるのかもね。
それを鳥や獣が更に喰らう。
いわゆる浄化ってやつなのかな、そう思うよ」
それからというもの、彼は悩み事が出来るとその神社へ参拝するようになった。
柏手を打ってしばらくすると、不思議に頭がスッキリとするのだそうだ。
「ああいった話を聞いた後だから、単に思い込みなのかもしれないけど。
でも言われてみれば、確かにあの社、妙に烏が多いんだよな」
『穴』
763 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/11/17(火) 18:26:24 ID:5s8Q8HvZ0
友人の話。
月の綺麗な夜、一人山道を歩いていると、行く手に黒い穴があった。
丁度、人がスッポリと入るくらいの大きさ。
落ちないように避けて進む。
高みに差し掛かった辺りで、月に照らされる山を眺めようと後ろを振り返った。
ギョッとした。踵の直ぐ後ろに、先程と同じような穴が口を開いている。
まるで穴だけが自分の後を付いてきたかのような、そんな想像をしてしまった。
足元に落ちていた石を、穴に蹴り落としてみた。
しばらくすると穴の縁が微妙に震え、ペッ!と勢いよく石が吐き出される。
慌てて石を避け、もう一度目を足元に向けた。
白々とした月明かりの下、もう穴などどこにも見えなかった。
『跡』
764 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/11/17(火) 18:27:24 ID:5s8Q8HvZ0
友人の話。
真冬日に、家の裏山を散歩していた。
普段は泥濘で入れない湿原にも雪が積もり、上を渡れるようになっていた。
鼻歌を歌いながら真っ新な雪を渡っているうちに、先行者の痕跡に出会した。
子供のものらしい、小さなスニーカーの足跡。
一直線に延々と、雪野の上を横切っている。
右足の跡だけが。
足跡は山の奥へ向かって進んでいた。
後を追うような真似はせずに、そこで下山したのだそうだ。
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